首都圏の鉄道の延伸計画が進んでいます。東京都は「未来の東京戦略2024」の中で、都心・多摩の鉄道ネットワークの強化として9つのプランを発表しています。この9つの中で、時期まで明記されている延伸は4つあり、2031年度を目途として完成予定の「羽田空港アクセス線(新路線 羽田空港~新橋)」、2030年代半ば完成予定の「東京8号線(有楽町線 豊洲~住吉)」「都心部・品川地下鉄(南北線 品川~白金高輪)」「多摩都市モノレール(上北台~箱根ヶ崎)」となっています。この4つの延伸は、沿線の大学の通学時間に影響するところがありますが、さらに影響が大きいのは、2030年度を開業目標としている「横浜地下鉄ブルーライン(あざみ野〜新百合ヶ丘)」です。このコラムでは、東急田園都市線「あざみ野」駅から、小田急線「新百合ヶ丘」駅まで、横浜地下鉄ブルーラインが延伸することにより、大学の通学時間がどのくらい変わるのかについてレポートしていきたいと思います。

 

出典:国土地理院ウェブサイト(下記URL)をもとにUS進学総合研究所が加工作成
https://maps.gsi.go.jp/#14/35.577719/139.555292/&base=std&ls=std&disp=1&vs=c0g1j0h0k0l0u0t0z0r0s0m0f1

横浜地下鉄ブルーライン(あざみ野〜新百合ヶ丘)延伸により、通学が便利になる大学はどこなのか?

開業目標を2030年度として、横浜地下鉄ブルーライン(あざみ野〜新百合ヶ丘)の延伸計画が進んでいます。2020年1月に、概略ルート・駅位置が選定され、現在は、建設物価の高騰などの顕在化した新たな課題の解消に向けて動いている状況のようです。延伸が実現すると、新百合ヶ丘〜あざみ野間は、約30分から約10分へと約20分短縮されることになります。これまでバスしかなかったので、鉄道で移動できるというのはとても便利になります。新設される駅は、既設「あざみ野駅」を除くと、「新百合ヶ丘駅南口付近」「ヨネッティー王禅寺付近」「すすき野付近」「瞼山(けんざん)付近」の4つとなっており、新駅周辺では、まちづくりの活性化が予想されます。

ここで、横浜地下鉄ブルーライン(あざみ野〜新百合ヶ丘)の延伸が実現された時に、通学が便利になる大学について考えてみたいと思います。新駅ができる付近にある大学は、間違いなく便利になります。これに加えて、ブルーラインの沿線にある大学や小田急多摩線沿線にある大学も、乗り換えが減ることで通学時間の短縮になり、便利になることが予測されます。
小田急線「新百合ヶ丘」駅

小田急線「新百合ヶ丘」駅前の昭和音楽大学と日本映画大学、そして、新駅の駅前となる田園調布学園大学は、延伸の効果が大きい

横浜地下鉄ブルーラインが延伸して新駅ができる近辺では、便利になることで、人口も増加する可能性も考えられる。そういう意味でも、新百合ヶ丘駅前にある「昭和音楽大学」「日本映画大学」や、新駅であるヨネッティー王禅寺付近にある「田園調布学園大学」は、通学時間が短くなるだけではない、学生募集上の効果も出てくると予測されます。

■新百合ヶ丘駅南口付近(昭和音楽大学、日本映画大学)
小田急線「新百合ヶ丘」駅前には、昭和音楽大学と日本映画大学があります。今まで、横浜方面から通学しようとした場合、東急田園都市線「あざみ野」駅からバスを使うか、大回りして電車を使って、「新百合ヶ丘」駅まで行くしかありませんでした。これが、直通になるということで、利便性がかなり高くなります。

■ヨネッティー王禅寺付近(田園調布学園大学)
ヨネッティー王禅寺付近に新駅ができる予定となっていますが、その駅の近くに田園調布学園大学があります。今までは、小田急バス「田園調布学園大学前」が最寄りでしたが、鉄道の駅前大学に変貌します。

■すすき野付近
この駅には、大学が近くにありません。新駅となる「すすき野付近」には、1974年~1980年頃に開発・分譲された「すすき野団地」「虹ヶ丘団地」があります。

■瞼山付近
この駅にも、すすき野付近と同様に、大学が近くにありません。徒歩25分ほどかかる距離にありますが、桐蔭横浜大学がこの駅からは一番近くなっています。新駅となる「瞼山(けんざん)付近」には、2013年10月にオープンしたスポーツ施設一体型の商業施設「あざみ野ガーデンズ」があります。
横浜地下鉄ブルーライン「あざみ野」駅

小田急線「新百合ヶ丘」駅を起点で考えると、通学時間が一番短くなるのは、東京都市大学横浜キャンパス

小田急線「新百合ヶ丘」駅は、多摩方面ともつながっているため、実際には、小田急多摩線や京王相模原線の周辺の人にも、通学時間の影響があると考えられますが、ここでは横浜地下鉄ブルーライン延伸による通学時間への影響を、「新百合ヶ丘」駅起点で考えてみます。ブルーライン沿線にある大学は、多くありますが、その中で6つのキャンパスをピックアップして通学時間を調べてみました。基本的には、一番安い路線を使用する条件で、徒歩時間は、電車を降りてからキャンパスに到着するまでの予測数値です。これで計算をすると、通学時間が一番短縮されるのは、横浜地下鉄ブルーライン「中川」駅が最寄りになっている、東京都市大学 横浜キャンパスとなりました。東京都市大学以外にも、通学時間が短縮される大学も多く、東京都内または川崎市から横浜方面の大学に通いやすくなるのが分かります。

●東京都市大学 横浜キャンパス 運賃756円→?円  約41分短縮
新百合ヶ丘(8:13)→登戸→武蔵溝ノ口→徒歩5分→溝の口→あざみ野→中川→徒歩11分→東京都市大学(9:17)1時間4分
新百合ヶ丘(8:12)→10分→あざみ野→2分→中川→徒歩11分→東京都市大学(8:35)23分

●ビューティ&ウェルネス専門職大学 運賃756円→?円  約31分短縮
新百合ヶ丘(8:13)→登戸→武蔵溝ノ口→徒歩5分→溝の口→鷺沼→徒歩21分→ビューティ&ウェルネス専門職大学(9:12)59分
新百合ヶ丘(8:12)→10分→あざみ野→2分→中川→徒歩16分→ビューティ&ウェルネス専門職大学(8:40)28分

●横浜国立大学 運賃790円→?円  約30分短縮
新百合ヶ丘(8:12)→町田→新横浜→三ツ沢上町→徒歩22分→横浜国立大学(9:38)1時間26分
新百合ヶ丘(8:12)→10分→あざみ野→24分→三ツ沢上町→徒歩22分→横浜国立大学(9:08)56分

●國學院大學 たまプラーザキャンパス 運賃546円→?円  約22分短縮
新百合ヶ丘(8:13)→登戸→武蔵溝ノ口→徒歩5分→溝の口→たまプラーザ→徒歩7分→國學院大学(9:01)48分
新百合ヶ丘(8:12)→10分→あざみ野→徒歩16分→國學院大学(8:38)26分

●慶應義塾大学 日吉キャンパス 運賃517円→?円  約17分短縮
新百合ヶ丘(8:13)→登戸→武蔵小杉→日吉→徒歩5分→慶應義塾大学(9:06)53分
新百合ヶ丘(8:12)→10分→あざみ野→21分→日吉→徒歩5分→慶應義塾大学(8:48)36分

●関東学院大学 横浜・関内キャンパス 運賃713円→?円  約15分短縮
新百合ヶ丘(8:12)→町田→東神奈川→関内→徒歩6分→関東学院大学(9:23)1時間11分
新百合ヶ丘(8:12)→10分→あざみ野→36分→伊勢佐木長者町→徒歩10分→関東学院大学(9:08)56分
東京都市大学 横浜キャンパスの最寄駅、ブルーライン「中川駅」

横浜地下鉄「センター南」を起点で考えると、通学時間が一番短くなるのは、大妻女子大学 多摩キャンパス

横浜地下鉄はブルーラインとグリーンラインの2つの路線がありますが、両方が重なっている駅の1つである「センター南」を起点にして、ここでは考えてみます。ブルーライン延伸により新駅ができる大学にも効果はありますが、もともとバスが通っていることを考えると、通学時間だけでは10~15分程度の短縮になるのではないかと予測されます。そこで、新しくできる駅以外の路線で、これよりも時間的に短縮の可能性がある、6つのキャンパスをピックアップして通学時間を調べてみました。こちらも、基本的には、一番安い路線を使用する条件で、徒歩時間は、電車を降りてからキャンパスに到着するまでの予測数値です。これで計算をすると、通学時間が一番短縮されるのは、小田急多摩線「唐木田」駅が最寄りになっている、大妻女子大学 多摩キャンパスとなりました。この大学以外にも、通学時間が短縮される大学も多く、川崎市・横浜市から多摩方面の大学に通いやすくなるのが分かります。

●大妻女子大学 多摩キャンパス 運賃713円→?円  約35分短縮
センター南(8:16)→中山→町田→新百合ヶ丘→唐木田→徒歩11分→大妻女子大学(9:34) 1時間18分
センター南(8:16)→7分→あざみ野→10分→新百合ヶ丘→15分→唐木田→徒歩11分→大妻女子大学(8:59) 43分

●駒沢女子大学 運賃890円→?円  約31分短縮
センター南(8:16)→中山→町田→新百合ヶ丘→徒歩5分→新百合ヶ丘駅バス→駒沢学園→徒歩3分→駒沢女子大学(9:39) 1時間23分
センター南(8:16)→7分→あざみ野→10分→新百合ヶ丘→徒歩5分→新百合ヶ丘駅バス→駒沢学園→徒歩3分→駒沢女子大学(9:08) 52分

●桜美林大学 多摩キャンパス 運賃836円→?円  約30分短縮
センター南(8:16)→中山→橋本→京王多摩センター→徒歩14分→桜美林大学(9:28) 1時間12分
センター南(8:16)→7分→あざみ野→10分→新百合ヶ丘→小田急多摩センター→徒歩13分→桜美林大学(8:58) 42分

●中央大学 多摩キャンパス 運賃927円→?円  約29分短縮
センター南(8:16)→中山→町田→新百合ヶ丘→小田急多摩センター→徒歩6分→多摩センター→中央大学・明星大学→徒歩11分→中央大学(9:52) 1時間36分
センター南(8:16)→7分→あざみ野→10分→新百合ヶ丘→15分→小田急多摩センター→徒歩6分→多摩センター→中央大学・明星大学→徒歩11分→中央大学(9:23) 1時間7分

●東京都立大学 南大沢キャンパス 運賃808円→?円  約17分短縮
センター南(8:16)→中山→橋本→南大沢→徒歩8分→東京都立大学(9:18) 1時間2分
センター南(8:16)→7分→あざみ野→10分→新百合ヶ丘→小田急永山→徒歩3分→京王永山→南大沢→徒歩8分→東京都立大学(9:01) 45分

●玉川大学 運賃556円→?円  約13分短縮
センター南(8:16)→中山→町田→玉川学園前→徒歩12分→玉川大学(9:08) 52分
センター南(8:16)→7分→あざみ野→10分→新百合ヶ丘→10分→玉川学園前→徒歩12分→玉川大学(8:55) 39分
大妻女子大学 多摩キャンパスの最寄駅、小田急多摩線「唐木田」駅

横浜川崎方面から多摩地区へ、多摩地区から横浜川崎方面へ、両方が通学しすくなり、どちらかが有利というわけではない

 横浜地下鉄ブルーラインの延伸は、2030年開業目標ということで、まだ目標となっています。もしも計画通りになれば、通学時間の短縮となる大学は、2028年度入試あたりから学生募集上の効果も出てくると考えられます。

 ただ、横浜川崎方面から多摩地区へ、多摩地区から横浜川崎方面への両方の移動が便利になっているわけで、どちらかの大学が有利になるという訳ではなさそうです。

 今後も、東海道線の新駅設置や、東京都心での鉄道の延伸の計画が実行されていきますが、首都圏の高校生にとっては、通える大学の範囲がさらに広がっていくことになり、大学にとっては、選ばれるための魅力がさらに必要になってくるということだと思います。

大学ジャーナルオンライン編集部

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