科学の甲子園は、全国の科学好きな生徒らが集い、競い合い、活躍できる場を構築・提供することで、科学好きの裾野を広げるとともに、トップ層の学力伸長を目的としています。

 

717校、8158人がエントリー

 第14回大会には、717校から8158人のエントリーがありました。第14回科学の甲子園全国大会(科学技術振興機構主催、茨城県など共催)が、3月21〜24日の4日間、つくば市のつくば国際会議場およびつくばカピオで開催されました。

 予選を勝ち抜いた全国47都道府県代表校は、1・2年生の6〜8人から成るチームで科学に関する知識とその活用能力を駆使してさまざまな課題に挑戦し、総合点を競い合いました。筆記競技と3種目の実技競技の得点を合計した総合成績により、東京都代表・都立小石川中等教育学校が第5回大会以来9年ぶり2回目の出場で初の総合優勝を果たしました。
2位は長野県代表・長野県諏訪清陵高校、3位は滋賀県代表・県立守山高校でした。

 大会初日は開会式、オリエンテーション、科学に関する知識とその応用力を競う筆記競技を、2日目に実技競技を行い、3日目に表彰式やフェアウェルパーティーなどが行われました。

 「第15回科学の甲子園全国大会」は、令和8年3月下旬に、茨城県つくば市で開催する予定です。

筆記〜習得した知識をもとにチームで融合的な問題に挑む

 筆記競技は各チームから6人を選出し行われました。競技時間は120分。メンバーそれぞれの得意分野を活かしてチームで協力しながら、理科、数学、情報の中から習得した知識をもとにその活用について問う内容で、教科・科目の枠を超えた融合的な問題など計12問に挑みました。

 例えば第12問、東京都にある環状鉄道路線・山手線の品川駅から、山手線のS駅に住むおばさんの家まで移動する。ただし、推しのイベントが山手線のどこかの駅で突発的に発生する可能性があり、そのため移動を助けるプログラムを書いて準備しておくことを基本とし、品川駅を起点0にして、内回りに高輪ゲートウェイ駅を1、田町駅を2のように、大崎駅の29まで番号付けすることにする。なお、乗車時間は1駅区間あたり2分と概算するものとする。

 上記の問題に対して原宿駅などの番号を答える問題や、品川駅から原宿駅までの最短乗車時間を求める問題、さらに難易度が上がり与えられた既定のプログラム1、2、3、4を使用しながら設問に解答していく複合的な問題。筆記競技では久留米大学附設高校(福岡県)が最高得点をあげ、第1位のスカパーJSAT賞を受賞しました。

実技①〜データをアプリで解析 加速度センサーの理解を深める

「スマホのセンサー」(競技者3人・競技時間100分)
 私たちが使っているスマートフォンには、GPS・ジャイロセンサー・加速度センサー・地磁気センサー・気圧センサーなど、数多くのセンサーが搭載されており、そのセンサー類で取得されたデータをアプリケーションで解析して活用しています。
実技競技1は、歩数を計測するためなどに搭載されている加速度センサーの位置を探す競技です。

●実験1「加速度センサーの特性」
●実験2「円運動における周期と加速度の関係」
●実験3「加速度センサーの位置」

 問1〜問9までを解答した後、専用の「チャレンジブース」で問10の解答用紙を提出。今大会は県立静岡高校(静岡県)が1位となりトヨタ賞に輝きました。

実技②〜手動でPCRを行い、ウイルスのDNAを検出せよ

「世界最大のウイルスを探せ!」(競技者3人・競技時間100分)
 5カ所のフィールド(海水、沼の泥、水道水、降ってきた雨水をそのままコップに貯めたもの、雨水がしみとおった河川敷の土壌)のうちの3カ所から各1個、合計3個のチューブ試料を回収し、世界最大のウイルス「パンドラウイルス」のDNAが存在する試料を同定する実技競技です。

 机上にある道具を使って、与えられたミミウイルスのDNAと共に、手動でPCRを行い、パンドラウイルスのDNAを検出しました。

 PCR産物4個(チューブ試料3個+ミミウイルス)についてポジティブコントロール2個とともにアガロースゲル電気泳動を行います。パンドラウイルスのDNAのGC含量が高く、DNA二本鎖が一本鎖に解離しにくいことをヒントに、うまく手動PCRが行えるかを問う競技です。

 この競技は、サーマルサイクラーを使わず、手動PCRを組み立てて行うには、本質的にPCRのしくみを理解し、かつチームとしてのまとまりがあって初めてできる実験であり、分子生物学の知識と共にチームワークも試されました。

 手動PCRにおいて55°Cに設定された保温カップの中のチューブ内では、どのような反応が起こっているかなどの設問に解答しました。

 最高得点を獲得した都立小石川中等教育学校(東京都)が1位に輝き、UBE三菱セメント賞を受賞しました。

実技③〜蓄積したエネルギーを再利用し、レースに臨もう

事前公開競技「フライホイール大作戦〜回転エネルギーを操ろう!〜」(競技者4人・競技時間155分)
 「フライホイール」=1枚ないし2枚で構成されたフライホイールと、「台車」=フライホイールを搭載できる構造で斜面に沿って下降することでフライホイールにエネルギーを蓄積できるものを使用し、フライホイールカーを製作して持ち込みました。競技内容は次の2種目です。

●走行タイム制御レース
製作したフライホイールカーを規定の長さの斜面上で下降させ、下りきった先の平面上で指定された距離を走行し、その走行タイムが目標タイムにどれだけ近づけられるかを競うレース。
●バンプクリアレース
斜面上で下降後、平面上にある突起(バンプ)を乗り越えながら、積載物内のボールを落とさずに走行し、指定された距離で走行タイムの短さを競うレース。

 予選チャレンジを行った後、上位12チームによって決勝チャレンジが実施されました。競技得点は、決勝進出チームは決勝の結果、それ以外のチームは予選の結果により決定されました。

 その結果、長野県諏訪清陵高校(長野県)が1位となり、学研賞に輝きました。

大学ジャーナルオンライン編集部

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