キリスト教ヒューマニズムに基づき、学生一人ひとりに向き合う教育を貫いてきた清泉女子大学。2025年4月に、これまでの1学部5学科体制から2学部体制へと改組。ディプロマ・ポリシーも見直し、専門的な知識や理解を深めるとともに、思考力や協調性といった汎用的な能力を伸ばすことにも力を入れる。さらに、全学生を対象に教員や専門のアドバイザーによる履修面談を導入し、オーダーメイドの学びを支援。興味や関心を通じて学生が自分の役割に気づくきっかけを与え、それぞれの価値を引き出すため教員が伴走する。横断的な学びと学生一人ひとりへのサポートの両輪で、正解のない時代を生きる力を育成していく。

 

大学のシンボルである本館「旧島津家本邸」は英国人建築家ジョサイア・コンドル設計の洋館。キャンパスを構える島津山は、品川駅・大崎駅・五反田駅から徒歩圏内の好アクセスだ

一人ひとりに向き合う教育の進化をめざした学部改組。
確かな基礎力を育て、個々の価値を伸ばしていく

 2025年4月、清泉女子大学は新たなスタートをきった。これまでの1学部5学科体制から、「総合文化学部」は日本文化・国際文化・文化史の3領域、「地球市民学部」は地域共生・ソーシャルデザインの2領域へと再編したのだ。学科の壁を取り払ったことで、同じ学部の領域間を横断して学べるだけでなく、総合文化学部と地球市民学部を行き来して学べる構成となった。その背景には、変化の激しい現代社会において、何が社会課題なのかを見出し、解決策を探る力を育てる狙いがある。

 同時に新たなカリキュラムでは、横断的な学びを効果的にするための「基幹教育」を新設。大学での学びを支える基礎を育てるとともに、両学部の学びをつなぐ役割を果たす。外国語、データリテラシー、キャリアデザインなど、分野に関係なく社会で通用する力を育てるとともに、ジェンダーや平和などSDGsに関連する科目も設けている。基幹教育で確かな「幹」を成長させ、その上で総合文化学部や地球市民学部が用意する専門科目へと枝葉を伸ばしていくイメージだ。

 新体制について、藤井由紀子総合文化学部長と辰巳頼子地球市民学部長は、こう自信をのぞかせる。「行き来して学ぶことで、総合文化学部の学生は外への発信力が伸びますし、地球市民学部の学生は文化的背景などの知識が身につきます。今後は、2学部協働のプロジェクトができないかと考えているところです」(藤井学部長)。「両学部とも、教員と1対1の履修登録面談を用意しているので、幅広い科目のなかから、自分の希望を実現する時間割を組むことが可能です。体系的な学びができるようサポートします」(辰巳学部長)

総合文化学部~『「好き」を「学び」に』をコンセプトに。
好きを多角的に追求することで、人生の核となる想像力を磨く

 総合文化学部は、清泉女子大学文学部の伝統を受け継ぐ学部だ。日本の表現文化を学ぶ「日本文化」、英語圏・スペイン語圏の言語と文化を学ぶ「国際文化」、歴史・美術史・思想史・宗教史を学ぶ「文化史」の3つの学問領域で構成され、東洋から西洋、古典から現代サブカルチャーまであらゆる文化的事象を学びの対象としている。

 最大の特長は、190科目にもおよぶ専門探究科目だ。「スペイン語をマスターしたい」「歴史を究めたい」「創作活動をしてみたい」「国際的視点で日本文化を学びたい」など、自分の学びたいこと、身につけたい力に応じてオーダーメイドの学びが可能となっている。

 同学部について、藤井学部長は「人生の核となる力がつく学部だ」と言う。「言語・文学・歴史を学ぶことで育まれるのは想像力、つまり「見えないものを見る力」です。目の前のものを分析したうえで、その裏にまで思いを馳せる。そんな人生の核となる力を身につけて欲しいですね。予想のつかない現代社会でも、想像力があれば自分の人生を充実させられると思います」

 カリキュラムは、「専門コア科目」(自身の専門領域)と「プログラム科目」(全領域から自由に履修可能)の二段構え。1年次には、学びの幹となる基幹教育科目群に加えて、専門基礎科目を中心に基礎力を身につけていく。ユニークなのは、専門コア科目の「総合文化スタディーズ」だ。オムニバス形式で各領域の教員から3テーマずつ講義を受けることができ、自分の専門領域を選ぶ大きなヒントを与えてくれる。領域は、1年次の前期と後期の終わりのタイミングで変更が可能。じっくり迷えるようにしたのは学生一人ひとりの「好き」を追求するためだ。

「人文学は間口が広くどんなものでも学問の萌芽にできます。学生たちには好きなものを振り下げながら、汎用的なスキルを身につけて欲しい。例えば、論理的に分析する手法、好きを言語化する能力などです。できることを増やし、自信をつけて社会に羽ばたいてほしいですね」

地球市民学部~教室と社会を行き来するプロジェクト学修で、
誰かの笑顔をつくる”ワンアクション”を実践する

 主に社会に焦点をあて、社会課題を解決するための学際的な学びを展開するのが地球市民学部だ。文化や社会を学ぶ「地域共生領域」と、デザインやメディア、ビジネスを学ぶ「ソーシャルデザイン領域」があり、座学と実践を行き来するプロジェクト学修が特長だ。

「本学部の目的は、一人ひとりの思いを社会に実装する力をつけること。そのため、まず教室で知識を身につけ、実際の現場に出向いて学び、経験したことをきちんと振り返る。こうしたプロセスを通じて、教員が提示した課題をこなすのではなく、学生自身が自分事として解決したいことを見つけていけるようになっています」と辰巳学部長。

 実践の場として、国内での地域おこし協力隊への参加をはじめ、女子大としてははじめて国際協力機構(JICA)との連携派遣覚書を締結し、在学中から短期の海外協力隊参加を可能にするなど、挑戦の機会も増やしているという。

 新カリキュラムでは、大学生として必要な思考力、行動力、協働力を、基礎から身につけていく。1年次には、社会課題に向き合うヒントがつまった思考法「101のコンセプト」に加え、メディアの利用法や情報発信、コンテンツ制作などのスキルを学ぶ。2年次で、グループでの協働力を磨き、3年次からは、企業や団体などと協働しながらプロジェクトを企画し実行していく。

「夏休みには集中講座を開講しています。ソーシャルデザイン領域では1年次に実践的なスキルを身につけ、地域共生領域では2年次に国際協力のための英語力を強化します。対象学年が違うので、できれば両方の集中講義に参加して欲しいですね。2つの領域をミックスする形で2年間学んだあと、専門的に究める領域を再度選んでもらいます」

 地球市民学部では、誰かの笑顔をつくる”ワンアクション”を社会課題解決のための「プロジェクト」と呼び、学びの中心に置いている。「その実現ためにもまず自分自身が変化して、なりたい姿になることが大切。卒業後はそれぞれの場所で変化を促すチェンジメーカーになってほしいです」

【大学情報】
・清泉女子大学公式Webサイト
https://www.seisen-u.ac.jp/
・総合文化学部
https://www.seisen-u.ac.jp/faculty/humanities/
・地球市民学部
https://www.seisen-u.ac.jp/faculty/global/

清泉女子大学

右/総合文化学部長 藤井由紀子教授
左/地球市民学部長 辰巳頼子教授

 

清泉女子大学

「好き」を「学び」に 「学び」を「強さ」に

清泉女子大学は2025年4月に総合文化学部と地球市民学部を開設。総合文化学部は日本文化・国際文化・文化史の3領域、地球市民学部は地域共生・ソーシャルデザインの2領域で構成されています。学生一人ひとりの個性を大切にし、「好き」な学びを通して、現代社会を自分らしく[…]

大学ジャーナルオンライン編集部

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