兵庫の名門として知られる甲南大学の理系学部・大学院が2026年4月、新たな展開を見せる。理系3学部(理工学部、知能情報学部、フロンティアサイエンス学部)のうち、「理工学部」を大きく改組。現在の3学科体制から、「環境・エネルギー工学科」「宇宙理学・量子物理工学科」「物質化学科」「生物学科」の4学科体制へと発展させる。正統派理系の伝統を継承しつつ、理学と工学を融合した学びを展開し、エッジの効いた高度理系人材の育成をはかるのが狙い。新たな理工学部の学びと、進化型理系構想について伺った。

 

2026年4月に理工学部を改組。環境・エネルギー工学科、
宇宙理学・量子物理工学科、物質化学科、生物学科の4学科に

 「進化型理系構想が目指すのは、社会にイノベーションをもたらすことができる高度な理系人材の育成です」。そう語るのは中井伊都子学長だ。成長分野であるグリーン、デジタル、マテリアル、宇宙・量子技術、バイオ分野での研究力を強化し、地球の未来に真の価値を生み出すことを目指している。

 その皮切りとなるのが、理工学部の改組だ。2026年4月からは、「環境・エネルギー工学科(新設)」「宇宙理学・量子物理工学科(改組)」「物質化学科(改組)」「生物学科」の4学科体制へと発展。いずれも社会ニーズに即してわかりやすく、学生に訴求力の高い学科名称となっているのもポイントだ。

 新設・改組を行う各学科の学びは以下の通りである。

「環境・エネルギー工学科」では、化学、物理、地学を横断するカリキュラムでマテリアルサイエンスを学ぶ。エネルギー・資源・環境に関する先端研究や、PBL(課題解決型授業)によりグリーン分野で活躍する実践力を養う。

「宇宙理学・量子物理工学科」は、宇宙理学(宇宙観測、宇宙理論、原子核物理)から量子物理工学(AI、半導体、新物質、量子センシング技術、再生可能エネルギー)まで多様な志向に対応する研究室を設置。X線を用いた宇宙技術や量子技術の研究がメインとなる。

「物質化学科」では、複合機能材料やスマート素材など新たな化学材料の研究を強化。次世代化学材料の創成を担い、素材開発にも力を注ぐ。

さらに学科の新設と合わせて、大学院にも「環境・エネルギー工学専攻」を設置。研究者育成のため、大学院進学率30%を目標に奨学金制度なども整えているという。

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大学ジャーナルオンライン編集部

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