学校法人日本女子大学(東京都文京区)は、2025年9月12日より全国公開される映画『風のマジム』との共同企画である「夏期特別教室」を、8月28日に日本女子大学目白キャンパス内にある成瀬記念講堂で行った。

 映画『風のマジム』は、人気作家・原田マハさんが手がけた小説『風のマジム』を原作として、俳優の伊藤沙莉さん主演で映画化された作品。南大東島産のサトウキビを使ったラム酒作りに挑み、契約社員から社長へと成長した女性の実話がもとになっている。

 日本女子大学は、私立女子大学の中では最も女性社長を多く輩出している実績(医歯薬系を除く)※があり、自立した女性を養成してきたことが評価され、この共同企画が実現したようだ。

※帝国データバンク 全国「女性社長」分析(2024年)女性社長数 出身大学データによる

 

(左から)小林富雄教授、伊藤沙莉さん、原田マハさん、伊ヶ崎大理教授

家政学部 家政経済学科の学生を中心に300名超の学生が「夏期特別教室」に参加

 今回の「夏期特別教室」の中で試写会が行われた映画『風のマジム』が起業を目指す女性を描いた作品であることから、参加対象者は学びの内容として関係が深い家政学部 家政経済学科の学生が中心となった。試写会終了後には原作者の原田マハさん、主演俳優で伊波まじむ役を演じた伊藤沙莉さんとともにトークセッションが行われ、やりたいことを目指す女性のチャレンジの在り方や課題について語り合った。

失敗はするものだと思って生きている。いくら失敗してもいい、挑戦を恐れないで欲しい

 トークセッションの中で、壁にぶち当たった経験は?という問いがあった。伊藤沙莉さんは「私は大抵のことを壁だと思わないタイプ。自分で壁だと思い込んでしまうから壁ができてしまうんですよね。壁を自分で設けないし、他人が作ったものも壁だと思わないです」と回答。また、「失敗はするものだと思って生きています。もちろん反省や後悔もあるけど、失敗や後悔した人に優しくなれるし、自分の経験値になる。人に迷惑をかけなければ失敗してもいい。失敗をしないとできない経験や、失敗が呼ぶ幸福もあるから恐れることはないと思っています」と力強く語った。

 原田マハさんも、「最近の若い世代は失敗したくないから挑戦しない、アクションしない人が増えていると何かで見ました。でも、挑戦する以上にワクワクすることはありません。若いみなさんはいくらでも失敗していい。挑戦を恐れないでほしいと思います」と挑戦することの大切さを伝えた。

2027年度に開設を構想する「経済学部(仮称)」について

 今回の夏期特別教室の参加対象者は「家政学部 家政経済学科」の学生が中心となったが、この学科は1964年から家政学部の中に設置されており、61年の歴史がある。人々の暮らしの問題を経済学的視点から分析し、社会の在り方を探究する力を育成してきた。しかしながら、家政学部の中に設置されていることから、なかなか発見してもらえないこともあった。そこで、2027年度から家政経済学科を基礎として新たに「経済学部(仮称)」の開設を構想。新学部では経済学や経営学の理論から応用、実践までを体系的に学ぶためのカリキュラムが展開される予定となっている。

 経済学部のような社会科学系学部は、定員規模が大きいものが多いが、日本女子大学の「経済学部(仮称)」は、入学定員99名と少人数の学部になるため、ST比(教員1人に対する学生数)に恵まれている。学びの領域は3つになっており、「経済」領域のほか、マーケティングや企業戦略なども学ぶ「経営・起業」領域、日々の生活により密着した問題を学ぶ「生活・公共」領域が設定される予定となっている。それぞれの領域の授業を跨いで受講することも可能だ。

2026年度に入学する「家政学部 家政経済学科」の学生も、2年次より新しいカリキュラムで学ぶことができる

 2027年度開設する「経済学部(仮称)」での新しいカリキュラムは、家政学部 家政経済学科にも同じように2027年度より新設される予定。そのため、2026年度の家政学部 家政経済学科の入学者についても、2年次より同じカリキュラムをとることができるようになっている。

 現在の家政経済学科のカリキュラムが継続される科目も多くあり、マーケティング論、行動経済学、フードシステム論などの人気科目も「経済学部(仮称)」のカリキュラムとなる。新しいカリキュラムの例としては、ファイナンス論、データマーケティング演習、アントレプレナーシップ論などが予定されている。「社会科学の女王」と呼ばれる経済学は、お金の動きだけではなく、人々の行動を分析する学問であり、その応用範囲は、気候変動、少子化、恋愛、企業の戦略などあらゆるところに及んでいる。

経済学や経営学を軸に、女性の一生に寄り添える学部を目指す

 今回の新設構想が予定どおり進行すれば、女子大としては初めて経済学部が誕生することとなる。今このタイミングで、日本女子大学が経済学部(仮称)を新設することの意義について、学部長に就任予定の伊ヶ崎大理教授は次のように語る。

「時代が変わってキャリアを積む女性は増えていますが、まだまだジェンダーギャップは存在すると考えています。女性が本来持っている力を活かしきれていないのは、社会にとっても大きな損失です。本学において経済学を学び、併せて正しい情報を精査する力なども身に付けることで、将来的にはマネジメント業務等も担える女性に成長してもらいたいと考えています」

 また、経済学の学びは実生活でも役に立つという。

「本学の経済学部(仮称)では、女性労働論や家族の経済学、社会保障論といった社会や人生に深く関わる科目も学ぶことができます。経済やお金の問題は、生きていくうえで切っても切り離せない。生涯にわたりさまざまな節目で、『そういえば大学時代、こんなことを学んだな』『あのとき授業で言っていたのはこういうことだったのか』と気付いてもらえる場面があると思います。人生における大切な節目での、選択の手助けになれるような学びを提供していきたいと考えています」

日本女子大学

文理融合の多様な教育を推進、女子総合大学としての基盤を強化

創立120周年を迎えた2021年、目白キャンバスに全学部を統合。2023年に国際文化学部、2024に建築デザイン学部を設置、2025年に食科学部を開設、2026年に文学部2学科の名称変更。「信念徹底」「自発創生」「共同奉仕」を理念として、高い専門的能力を有し、[…]

大学ジャーナルオンライン編集部

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