東北大学大学院生命科学研究科の大野ゆかり研究員らは、侵略的外来種のトカゲ「グリーンアノール」が、沖縄においても急速に個体数・分布を拡大する可能性があることを示した。
グリーンアノールは、侵略的外来種であり、外来生物法で指定された特定外来生物。小笠原諸島では、1960年代に侵入後、急速に数を拡大し、固有の生物を絶滅させるなど、自然環境に大きな影響を及ぼしている。そのため、小笠原諸島の世界自然遺産からの登録取消しも危惧されるほどの大きな懸念事項だ。
一方、沖縄島南部においては、1989年に初めて移入が確認され、那覇近郊では高密度で生息している場所もある。現時点では沖縄島全域に分布拡大するに至ってはいないものの、今後の効果的な防除対策を行うための研究が必要だった。
そこで研究グループはまず、グリーンアノールの遺伝子型を調査。その結果、沖縄島のグリーンアノールの移入元は、北米の東南部の湾岸から内陸に分布している集団であると推定された。
次に、この移入元の生息環境をもとに、種分布モデルを用いて、沖縄島での生息適地を推定。結果は、沖縄島全域が生息適地というものだった。
さらに、沖縄島北部での分布制限要因の推定したところ、低い年平均気温、開けた環境の少なさ等が関係していると示唆された。しかし、今後、急速な適応や温暖化によって、低温環境は制限要因とはならない可能性がある。また、森林の減少や開けた環境の増大は、グリーンアノール拡大の危険性を増大させるという。
小笠原では、長期間拡大しない状態から急速に個体数・分布を拡大するという現象が起きた。沖縄島でも同様の事態に陥る可能性があり、捕獲や捕殺による早急な対策が必要だ。