東京理科大学と量子科学技術研究開発機構の共同研究チームは、モデル植物であるシロイヌナズナにイオンビームを照射し、一つの染色体のうちの3分の1が別の染色体に挿入されている突然変異植物の作出に成功した。

 イオンビームを植物に照射すると、細胞を通過する際にDNAを破壊し、修復過程でエラーが起こし効果的な「突然変異」が発生する。本研究で、どの遺伝子に突然変異が生じたのか調べたところ、単に一つの遺伝子が破壊されているだけでなく、約3,000個の遺伝子を含む第3染色体の断片がすっぽり抜けて、第2染色体に挿入されており、植物に劇的な構造変化が生じていることが分かった。これは、イオンビームが、従来の放射線(X線、ガンマ線など)と比べ、DNAを破壊する力が強いためだと考えられる。

 この構造変化を起こした植物は、正常に生長して種(たね)も出来るが、元の植物と交配すると次の代では種が出来にくくなり、別の種(しゅ)のような性質を持つ。つまり、イオンビーム照射により、従来の方法ではなかなか得られなかった新しい特徴を持つ新品種を作出する事が可能になった。

 本研究技術の応用により、染色体構造をデザインする研究が進めば、従来の育種の限界を超えて、次世代の農業やバイオ産業の発展につながると期待される。

論文情報:【Journal of Radiation Research】An ion beam–induced Arabidopsis mutant with marked chromosomal rearrangement

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