オメガ3脂肪酸は、抗炎症作用、抗動脈硬化作用を持つと言われ、一般に「体に優しい脂肪酸」として認識されている。ところが、そのオメガ3脂肪酸が「アレルギーを悪くする」という意外な側面を持つことが、東京大学の研究グループの発見によって明らかとなった。

 研究グループはまず、アレルギーの中心的役割を担う細胞であるマスト細胞が、オメガ3脂肪酸が酸化されて生じた「エポキシ化オメガ3脂肪酸」を常時産生していることを発見した。マスト細胞はアレルゲンと出会うと活性化し、痒みや気道収縮、血管拡張による体温低下などのアナフィラキシー反応を引き起こす。過度なマスト細胞の活性化が見られることがアレルギー患者の特徴だ。

 研究グループは、マスト細胞においてエポキシ化オメガ3脂肪酸の産生を担う酵素の同定を試みた。結果、PAF-AH2という脂質分解酵素がエポキシ化オメガ3脂肪酸を産生しており、産生されたエポキシ化オメガ3脂肪酸はマスト細胞の活性化を抑える作用を持つSrcin1という分子の発現を減少させることで、マスト細胞の活性化を促進していることがわかった。

 PAF-AH2の酵素活性がマスト細胞の活性化に重要であることを突き止めた研究グループは、続けて、PAF-AH2の阻害剤をマスト細胞に添加する実験を実施。すると、マスト細胞の活性化とそれによるアナフィラキシー反応が顕著に抑えられたといい、アレルギーの全く新しい創薬標的としてPAF-AH2が有用であることを示すことに成功した。

 本成果から今後、PAF-AH2の阻害を分子基板とした全く新しい抗アレルギー薬の創生が期待されるという。

論文情報:【Nature Medicine】Omega-3 fatty acid epoxides are autocrine mediators that control the magnitude of IgE-mediated mast cell activation

大学ジャーナルオンライン編集部

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