大阪大学産業科学研究所の古賀大尚特任助教、能木雅也教授らの研究グループは、紙を用いてフレキシブルな電子ペーパーを作製することに成功した。
我々は約2000年もの間、手書きや印刷により紙に情報を表示してきたが、近年のガラスやプラスチックの透明基材を用いて作製された電子ペーパー端末の普及により、紙の情報表示媒体としての価値が低下しつつあるのが現状であった。
そこで今回、同研究グループは、樹木セルロースナノファイバーからなる新しい「透明な紙」と、セルロースパルプ繊維からなる従来の「白い紙」を併用することで、電子ペーパーの一種であるエレクトロクロミック(EC)ディスプレイを開発した。従来の紙は絶縁性で透過性を持たないが、導電性高分子またはイオン液体を複合化することにより、透明性に優れた電極と視認性に優れた白い電解質を作製することに成功した。そして、それらを組み合わせてフレキシブルな“紙”の電子ペーパーを実現した。
この成果により、今後、紙に手書きや印刷だけでなく、電気で情報を表示することも可能になる。また、本研究グループは、これまでに、紙ベースのメモリ、トランジスタ、アンテナ、スーパーキャパシタといった様々な電子デバイス素子を開発することにも成功している。これらの技術を統合すれば、将来、紙の電子書籍も実現すると期待される。