佐賀大学の永野幸生総合分析実験センター准教授、木村圭農学部准教授らの研究グループは、有明海に生息するノリの全ゲノムを解析した。ノリのさまざまな品種を全ゲノムレベルで比較したのは世界初。
佐賀大学によると、研究グループは有明海で養殖されているスサビノリを中心に養殖ノリと養殖場付近で採取された野生ノリの全ゲノムを解析した。比較対象として中国・山東省の野生のスサビノリを用いた。
葉緑体とミトコンドリアのゲノムを解析した結果、有明海の養殖、野生ノリは中国・山東省産に比べてゲノムの違いが極めて小さく、遺伝的にとても類似していることが明らかになった。
続いて、核のゲノムを解析し、同じ養殖品種の遺伝的変化を追跡したところ、有明海の養殖ノリと野生ノリが近縁種であることが確認された。養殖ノリは気候の変動に耐えうる新品種の開発が求められているが、研究グループは養殖場周辺の野生ノリを用いて品種改良しても画期的な品種の出現は見込めないとみている。
スサビノリは迅速に大きく生長する株が見つかり、養殖が広がったが、その変異を起こした遺伝子は分かっていない。研究グループはこのゲノム解析を通じて遺伝子の発見に努めるとともに、多種多様なノリの中から気候変動に耐えられる品種を見つけることにも挑む方針。
論文情報:【PLOS ONE】Genomic diversity of 39 samples of Pyropia species grown in Japan