慶應義塾大学薬学部医薬品情報学講座と株式会社ミナカラは、薬剤師によるオンライン相談において共同研究を行い、「薬剤師によるオンライン相談について実態調査」報告書を公開した。

 厚生労働省の「オンライン診療の適切な実施に関する指針(2019年7月)」において、薬剤師は、医師以外が行う遠隔健康医療相談の1つとして、患者からの相談をオンラインで応需し、一般的な医学的な情報の提供や、一般的な受診勧奨(病院や医療機関などの紹介)などの情報提供できる。

 こうした薬剤師による「オンライン相談」は、対面を避けて相談したいという患者の課題を解決し、時間や場所を制限されずセルフメディケーションをサポートできる可能性がある。しかし、実店舗ではない、オンラインにおける相談の取り組みはほとんど実施されていない状況が続いている。

 今回、慶應義塾大学とミナカラは、共同研究の一環で、薬剤師によるオンライン相談に関する実態調査を実施。本調査では、ミナカラが運営する「オンラインお薬相談サービス」の相談内容記録データ572件のうち、相談者481名を対象に解析。患者が薬剤師に行った相談の特徴や、相談によってセルフメディケーションの適正化が図られた事例を明らかにした。

 薬剤師による「オンラインお薬相談サービス」の利用者は、女性が65%。20代、30代の利用者が全体の5割以上で、20代以降年代が上がるほど相談は減少する傾向が見られた。相談した【症状】として最も多かったものは、「皮膚」の相談が23%。続いて「性」が17%、「痛み」が14%、「睡眠」が13%。相談した【内容】として最も多かったのは、症状に対する「おすすめの薬」が181件(31%)と最も多く、「飲み合わせ」が121件(21%)と全体の過半数を占めた。

 さらに「飲み合わせ」に関する相談121件の内訳として、「OTC医薬品に関する飲み合わせ」が53件(44%)と最も多く、続いて「処方箋薬どうしの飲み合わせ」40件(33%)だった。

 また同時に、「オンラインお薬相談サービス」の利用経験をもつユーザーを対象にアンケート調査も実施。有効回答数55名。回答者の年代は、幅広く女性が7割、そのうち通院中が5割程度。オンライン相談のメリットとして、「時間帯を問わないこと」「気軽さ」「対面で接触する必要がないこと」「非同期のコミュニケーションであること」等の回答が多かった。

 オンライン相談と実店舗での相談との比較では、「オンラインの方が良い」(56%)「どちらとも言えない」(40%)「実店舗の方が良い」(4%)と回答。相談相手が薬剤師であることにメリットを感じている回答者が、8割を占め、その理由として「信頼して質問できる」「正確な回答を得ることができる」等が挙げられた。今後OTC医薬品について相談をする際、薬剤師によるオンライン相談サービスを利用意向については、利用したい(94%)と回答した。

 今後、これらの調査結果をもとに、薬剤師とのオンライン相談の有用性や課題を明らかにし、安定的に薬剤提供する医療体制づくりに役立てていく。

※OTC医薬品は、医師に処方してもらう「医療用医薬品」ではなく、薬局やドラッグストアなどで自分で選んで買える「要指導医薬品」と「一般用医薬品」のこと

※「薬剤師によるオンライン相談に関する実態調査」前迫大典、小川亮、児玉亮二、須永賢太、喜納信也、木崎速人、堀里子、薬剤師によるオンライン相談の実態調査、日本薬学会第141年会、2021年3月28日

参考:【株式会社ミナカラ】ミナカラと慶應義塾大学との共同研究の成果として「薬剤師によるオンライン相談に関する実態調査」報告書を公開

慶應義塾大学

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