東北大学の圓山(まるやま)重直巨樹のグループはサントリーグローバルイノベーションセンターがJAXA協力のもと実施する、お酒のまろやかさに関する研究に協力します。研究は国際宇宙ステーション・「きぼう」日本実験棟にて行われます。
蒸留酒は穀物やブドウなどをアルコール発酵させたものを蒸留することでアルコールの濃度を高めたお酒です。これらは長期間熟成することでまろやかな香味が生まれることが知られていますが、その仕組みは解明されていません。圓山教授らはお酒のまろやかさは、お酒の風味の素となる分子がネットワークを形成するために生まれるのではないかと言う仮説を立てました。これまでこの仮説を検証するために東京大学物性研究所やサントリーなどとの共同研究を進めてきました。その結果、お酒の内部での対流を抑制すると分子がネットワークを形成し、まろやかさが作られる可能性を示すことができたのです。そしてこの度、この結果をもとに重力が無い宇宙空間でお酒を熟成させる実験を行うことになりました。対流の発生には重力が関わっているからです。
この実験ではまず、蒸留酒酒のサンプルを宇宙に打ち上げるものと地上で保管する物に分けます。これらを圓山教授らの技術などで分析することで、宇宙空間に持って行ったサンプル中に分子のネットワークが形成されるかどうかを調べるとしています。
以前も国際宇宙ステーションでイギリスのスコッチウィスキーでの研究が行われたことがありました。こうした研究は今後のおいしいお酒造りに役立てられることでしょう。国際宇宙ステーションでは飲酒は禁止されているのでお酒好きの宇宙飛行士がいたら酷な話ですが、よりおいしいお酒を安価で手に入れることができるように実験に取り組んでいてくています。一般の人にはまだまだ遠い宇宙ですが、そこで得られた研究成果は私たちの生活にも役立てられるでしょう。