神戸大学の山田秀人教授、谷村憲司講師、森岡一朗特命教授、および愛泉会日南病院疾病制御研究所の峰松俊夫所長らの研究グループは、出生前に胎児の先天性サイトメガロウイルス感染の有無を検査する新手法を見出した。

 サイトメガロウイルスは胎児感染を起こし、乳幼児に難聴、精神や運動の発達障害といった重い後遺症を残す原因となる病原体。日本でも年間1,000人の先天性感染症児が生まれていると推定されている。近年、早期に抗ウイルス薬で治療を行うことで難聴や精神発達の遅れが改善出来るということが分かってきたが、全ての赤ちゃんを対象にした検査は膨大な費用がかかるため実施されていない。より経済的な方法として先天性感染児を出産するリスクの高い妊婦を出産前に見つけ出し、産後、赤ちゃんに検査をするほうが現実的と考えられる。

 先天性感染は、抗体を持たない妊婦が妊娠中にサイトメガロウイルスに初感染した場合に発生するのが一般的で、妊娠中に初感染したことを診断する抗サイトメガロウイルス免疫グロブリンM(IgM)抗体検査が広く用いられている。しかし、数年たっても陽性が持続する場合があり、当事者に過度の不安を与える恐れがある。また、妊娠中の胎児感染の確実な診断方法として羊水検査があるが、羊水穿刺による破水、子宮内感染、流産などの危険性がある。

 そこで研究グループは、母体を傷つけずに感染を出生前予測する方法について研究を実施。最良の検査法を決定するため、抗サイトメガロウイルスIgM抗体が陽性の妊婦300名を対象に、問診や妊婦の血液検査、胎児の超音波検査、妊婦の血液・尿・子宮頸管粘液中のサイトメガロウイルスDNA PCR検査を全例に実施、統計解析を行なった。

 その結果、胎児超音波検査と、母親の子宮頸管粘液PCR検査が出生前予測に最も有用であることが明らかになった。母親の子宮頸管粘液中のウイルスDNA検査を先天性感染の出生前予測に用い、しかも、有用であったとする報告は世界初となる。

 いずれも母体を傷つけることなく検査でき、感染が疑われる妊婦に対してより安全・安価な方法で先天性感染を予測することができる。また効率的に患児を発見できるため早期治療が可能になり、先天性サイトメガロウイルス感染症児の神経学的予後の改善が期待される。

大学ジャーナルオンライン編集部

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