東京大学生産技術研究所の溝口照康准教授らの研究グループが、機械学習で作った簡易な人工知能で複雑な界面の構造を予測することに成功した。従来の手法では22年かかる計算を3時間程度で終えることができ、この手法を利用することで優れた物質の開発スピードが加速されそうだ。
東京大学によると、界面は気体と液体、液体と固体、固体同士など2つの相が互いに接触している境界面を指すが、その構造は極めて複雑で、膨大な量の計算が必要になり、これまで予測が困難とされてきた。
溝口准教授らの研究グループは、データを統計処理することでデータ中に潜む法則を見つけ出す機械学習のうち、仮想スクリーニングという手法を使い、予測に挑んだ。仮想スクリーニングでは、コンピューターがデータ学習すると、回帰器という簡易な人工知能の器を作製する。
これを通すことにより、膨大な量の計算をせずに界面の予測が可能になった。従来の手法と比べ、計算速度は実に6万倍になるという。
界面は電池や触媒などさまざまな物質の機能と深く関係している。このため、この研究は今後、科学技術振興機構の戦略的創造研究推進事業の研究課題に採択され、その助成を受けて続けられる。これまでの研究成果は米国科学振興協会が発行する科学誌「サイエンス・アドバンス」に掲載された。