株式会社メルカリ代表取締役CEOである山田進太郎氏は、ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)を推進していくため、2021年7月1日、山田進太郎D&I財団を設立した。活動の第一弾として、理系女性向けの奨学金プログラムを実施する。今後、総額30億円を財団に寄贈し、D&I推進のための取り組みを行っていく。

 山田進太郎氏はこれまで企業活動を通じてD&Iの推進に取り組んできたが、中長期な取り組みで営利企業では難しいことも多くあると感じて一般財団法人を設立。ジェンダー・人種・年齢・宗教などに関わらず誰もが自身の能力を最大限に発揮できる社会の実現を目指していく。

 最初の取り組みとして、理系職種が男性に偏り、国内の女性エンジニア比率は20%(※1)に留まるなどジェンダーバランスが崩れているという課題に注目。この背景には、日本の大学における理工学系女性比率が18.15%(※2)とOECD(経済協力開発機構)の中でも最低という現状や、中学生時点では理系科目の成績の男女差はないにも関わらず、周囲の反対やロールモデルの欠如から、進学時に文系を選択する女子学生が多くなっていることがあげられる。

 このような状況をふまえ、山田進太郎D&I財団では、中長期的な課題解決として中高生教育の時点で理系を選ぶ女子学生の増加に取り組む。大学における理工学部系の女性比率を、2035年までに28%まで伸ばすことを目標とする。

 まず第一弾として「高校入学時点で理系を目指す女性」100名に対して奨学金を支給するプログラムを開始。これにより、理系科目が好き・得意であったり理系職種に興味があるにも関わらず、周囲の環境からイメージが付かなかったり、金銭的な問題で諦めてしまっている女子学生が自身の可能性を広げるために理系を選ぶことを後押しする。

 この奨学金プログラムでは、応募・選考・支給などのプロセスを極力オンライン化することで、劇的な効率化を目指し、将来的には常時1,000名以上への支給を目指す。また、より多く人が興味をもち、気軽に応募できるよう、能力主義ではなく抽選制で支給者を決定する。応募のハードルを下げるため面接も行わない。ただし、多様性などの観点から調整を行う可能性がある。

 奨学金の募集期間は2021年8月4日(水)~9月30日(木)。日本国内の高等学校理数科、令和3年度スーパーサイエンスハイスクール指定高等学校、または高等専門学校を受験し入学予定の女子が対象となる(中学校からの内部進学者を除く)。支給金額は国公立学校25万円(年額)私立学校50万円 (年額)で、2022年5月頃、指定の口座への振り込みを予定している。最大高校在学中の3年間、高専在学中の5年間支給する(継続審査あり)。希望者は、エントリーフォームより応募する。

 また、理系に興味のある女子中学生を対象に、理系職で活躍する女性研究者や起業家が登壇するオンラインイベントを8月22日(日)17:00~18:00に開催する予定。「活躍中の先輩が語るSTEM(理系)の面白さと題して、スプツニ子!さん(アーティスト/東京藝術大学デザイン科准教授)、高橋祥子さん(ジーンクエスト代表取締役社長/ユーグレナ執行役員、農学博士(生命科学分野))、大隅典子さん(東北大学副学長・附属図書館長・大学院医学系研究科教授)を迎えてのパネルディスカッションを行う。その後、奨学金の概要の説明も行われる。要事前申込。

※1 情報サービス産業協会「2019 年版 情報サービス産業 基本統計調査」
※2 令和2年度 文部科学省 学校基本調査 関係学科別 大学入学状況より

参考:【一般財団法人山田進太郎D&I財団】募集概要
8月22日【女性中学生向け】オンライン配信イベント開催のお知らせ

大学ジャーナルオンライン編集部

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