東北大学大学院生命科学研究科の渡辺正夫教授、高田美信技術専門職員らの研究グループは、どちらか片方の親の遺伝子の性質だけが子に現れるメンデルの「優性の法則」について、複雑な優劣関係を決定する新たな仕組みを見つけた。優性遺伝子が劣性遺伝子の働きを阻害するもので、英国の科学誌「ネイチャー・プランツ」に掲載された。

 東北大学によると、研究グループには農業・食品産業技術総合研究機構、奈良先端科学技術大学院大学、大阪教育大学、神戸大学、東京大学の研究者も加わった。

 親から子へ遺伝子が受け継がれる遺伝現象で片方の親の遺伝子が持つ性質だけが現れることは、古くからメンデルの優性の法則で知られている。性質として現れる遺伝子を優性遺伝子、発現しない遺伝子を劣性遺伝子と呼ぶが、これまで劣性遺伝子が機能を失っているため、性質が現れないと考えられてきた。

 研究グループがナタネの遺伝子を調べたところ、24基の塩基で構成される低分子RNA(※1)を見つけた。優性の低分子RNAを劣性遺伝子がある個体に人為的に導入したところ、劣性遺伝子の発現を阻害する働きを持つことが分かった。

 遺伝子に優劣関係が生じる原因については、古くから議論が繰り返されてきた。約100年前に優劣関係を制御する架空の因子が進化する可能性が提唱されたが、その後劣性遺伝子が機能を失っているとする説が有力視されるようになっていた。

 今回、研究グループが発見した低分子RNAは過去に提唱された仮説の遺伝子そのもので、遺伝子が低分子RNAを獲得して優性遺伝子となる道筋も明らかになった。研究グループはこの知見を応用すれば遺伝子の働きを人為的に調節できるようになるとし、有用な遺伝子を働かせて植物育種技術を発展させる可能性があるとみている。

※1 低分子RNA 細胞核の中にある核小体に存在するRNA

大学ジャーナルオンライン編集部

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