住宅に潜む小型哺乳類のジャコウネズミが中世以降、人類の交流範囲が広がるに伴い、生息域を拡大したことが、北海道大学とアジア、アフリカ8か国の共同研究で明らかになった。中世のイスラム商人の活動や大航海時代の到来が生息域拡大の引き金になったとみられる。研究結果は日本哺乳類学会が発行する英文科学誌「マンマルスタディ」に掲載される。

 北海道大学によると、ジャコウネズミはモグラやトガリネズミの仲間の真無盲腸目に属する小型哺乳類で、体重30~100グラム前後。インドからインドシナ半島を原産とし、日本から東南アジア、インド、東アフリカ沿岸域に広く生息している。クマネズミやハツカネズミと同様に住宅に潜んで暮らしている。
北海道大学と8カ国の研究者は、東シナ海沿岸から東南アジア、南アジア、東アフリカ沿岸域計44地点で採取した169体のジャコウネズミのミトコンドリアにある遺伝子の塩基配列を調べ、捕獲地点と比較して移動経路を推定した。

 その結果、日本から中国南部、ベトナムなどに生息するジャコウネズミに遺伝的違いがないことが分かった。沖縄のジャコウネズミは長く在来種と考えられていたが、大陸から持ち込まれた外来種であることが判明した。
東アフリカ沖のジャコウネズミのうち、タンザニアのザンジバル島、マダガスカル、コモロのものはイランと同じタイプの遺伝子だったが、仏領レユニオン島は東南アジアに近いタイプであることが分かった。イスラム商人や大航海時代のヨーロッパの貿易船に乗って移動したとみられる。

 大航海時代には日本に鉄砲が伝来するなど東洋と西洋の垣根を越えて交易が盛んになったが、研究チームはジャコウネズミの生息域拡大にも影響を与えたとみている。

大学ジャーナルオンライン編集部

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