国立大学の学生の自殺者数が2020年度、人口10万人当たりで17.6人を数え、過去6年間で最多となったことが、茨城大学保健管理センターの布施泰子所長らの調査で明らかになった。布施所長は、日本全体の自殺率が2020年度、12年ぶりに増加に転じたが、同じ傾向が国立大学の学生に見られると分析している。
調査は国立大学保健管理施設協議会のメンタルヘルス委員会が全国の国立大学82校から2020年度に死亡した学生の性別、死因など情報提供を求め、分析した。
それによると、82校の学生43万3032人(男性27万3308人、女性15万9724人)のうち、男性58人、女性18人の合計76人が自殺もしくは自殺と思われる死因で死亡していた。人口10万人当たりの自殺者数は17.6人で、うち男性は21.2人、女性は11.3人に上った。
大学生の自殺はこのところ、緩やかな景気回復や売り手市場の就職戦線などから減少傾向にあったが、男子大学生は2015年以降の過去6年間、女子大学生は2013年以降の過去8年間で最大となった。
2020年度は新型コロナウイルスの感染拡大で大学の授業が対面からオンラインに切り替わったほか、部活動などの自粛が相次ぎ、学生の孤立が社会問題に浮上した。布施教授らは今後、自殺した学生の特性を分析し、自殺につながるリスク要因の把握に努める考えだが、友人との交流機会の減少や経済的に厳しい状況から学生の間で強い不安感が広がっていることも関係している可能性があるとみている。