近畿大学東洋医学研究所の武田卓所長を中心とした研究チームは、女子高校生の月経痛や月経前症候群(Premenstrual Syndrome、以下PMS)が、コロナ禍によるストレスの影響で悪化していることを、世界で初めて明らかにした。
月経痛やPMSは月経随伴症状の代表的な疾患で、ストレスによって悪化し、女性の生活の質を著しく下げることが知られている。一方、新型コロナウイルス感染症は、世界中の人々に大きなストレスを及ぼし、特に思春期女性への影響が大きいことがわかっている。しかし、これまで月経痛・PMSと新型コロナウイルス感染症によるストレスの関連は明らかではなかった。
そこで研究チームは2020年12月に女子高校生1,351人を対象に、月経痛・PMSの重症度とコロナ禍におけるストレスとの関連性について調査を行い、有効例のうち、月経周期が正常である871人を解析した。すると、5.6%(49人)がPTSD症状(心的外傷後ストレス障害)を示し、ストレス症状を示す生徒ではパンデミック前と比較して、月経痛・PMSが悪化したこと新型コロナウイルスによるPTSD症状がPMSの有意かつ独立した増悪因子となることが明らかとなった。
コロナ禍におけるストレスについて、月経関連疾患への影響はこれまで考慮されていなかった。月経痛・PMSは女性のQOLを著しく障害することから、この研究成果は新型コロナウイルス感染症の流行が長期化するなかで、医療従事者や教育関連者にとって、思春期女性の健康管理を適切に行うための一助となるとしている。
また、PMSやPTSD症状は生徒自身やまわりの教育関係者での認知が難しいことから、表面に現れやすい月経痛を手がかりに、背後に隠れている可能性があるこれらの症状に対しても、十分配慮する必要性があることがも示された。
※月経痛は、月経の直前から月経中までに起こる下腹部や腰の痛み。
※月経前症候群(PMS)は、月経前、3~10日のあいだ続く精神的あるいは身体的症状で、月経とともに減少または消失する症状のこと。イライラ・おちこみ・不安感といった精神症状と、腹部膨満感・乳房症状といった身体症状が認められる。
※月経随伴症状は、月経痛や月経前症候群(PMS)といった月経に関連して現れる症状。