久留米大学医学部の古賀義法助教と松井孝憲准教授らは、昭和大学医学部の山岸昌一教授との共同研究により、モデル動物の敗血症死を劇的に阻止する核酸医薬品(RAGEアプタマー)の開発に成功した。
ウイルスや細菌の感染などにより病原体が体内に侵入し、全身に炎症が引き起こされて臓器障害が進行する敗血症は、これを原因として世界中で年間500万人以上が死亡していると推計される一方で、治療法の選択肢は限られており、未だ有効性の高い治療法が確立していない重篤な疾患である。
最近、敗血症で引き起こされる炎症反応には、糖化したタンパク質であるAGE(エージーイー、終末糖化産物)がはまり込む鍵穴、「RAGE(レイジ)」が関わることが明らかになった。RAGEはAGEの作用を伝えるだけでなく、敗血症の伝達物質であるHMGB1(high mobility group box 1)の作用にも関わっており、病原体やウイルスに感染すると体内で産生されるHMGB1がRAGEに結合することで、敗血症を発症する。
今回、本研究では、RAGEに蓋をすることで鍵穴を塞ぎ、HMGB1とRAGEとの結合を阻害する核酸医薬品(RAGEアプタマー)の開発に成功した。RAGEアプタマーを用いることで、敗血症モデルマウスの生存率が劇的に向上したとしている。核酸医薬品によってモデル動物の敗血症による死亡が抑えられることを示した成果は、世界で初めてとなる。
新型コロナウイルス感染症がパンデミックの様相を呈し、敗血症に対する新たな治療手段の開発が喫緊の課題となる中、RAGEアプタマーは、重症感染症による敗血症に対しても有効な治療手段となることが期待される。