幼児期に読書に興味を持たせる取組みのひとつに、「ぬいぐるみお泊まり会」がある。岡山大学大学院教育学研究科の岡崎善弘講師の共同研究グループは、お泊まり会前後の子どもの読書活動を調査し、お泊まり会が子どもの読書活動を促進させることを明らかにした。
アメリカの図書館で2006年頃から始まった「ぬいぐるみお泊まり会」。子どもたちからお気に入りのぬいぐるみを一晩預かり、図書館でぬいぐるみが絵本を読んでいる場面を撮影し、ぬいぐるみを迎えに来た子どもに『ぬいぐるみが絵本を読んでいたよ。』と写真と絵本を渡すことで、子どもたちが絵本や図書館を身近に感じるようになるというもの。
日本でも2010年頃から始まり人気となっているが、実際、お泊まり会が子どもたちの読書活動の向上に貢献しているかは検証されておらず、その効果は明らかになっていなかった。そこで、岡崎講師の共同研究グループは、お泊まり会の効果を科学的に検証するため、3~5歳の幼稚園児42人を対象に、お泊まり会前後で読書活動が変化するかを調べた。
その結果、お泊まり会前は、ぬいぐるみに対して絵本の読み聞かせをする子どもは2人だけだったが、ぬいぐるみを子どもたちに返した当日は、21人の子どもがぬいぐるみに読み聞かせを行い、能動的な読書活動が増えることが分かった。一方で、お泊まり会後3日経つと、読み聞かせをする子どもの数が4人に減り、効果が続く期間は3日程度と短いことも明らかになった。しかし、お泊まり会から1カ月後、子どもたちにお泊まり会のエピソードを思い出させると、その前後で読み聞かせをする子どもの数が再び増加した。
この実験から、お泊り会には、大人に絵本を読んでもらう幼児期から小学校入学時に必要な子どもの読書活動の自発性への転換の橋渡し的な役割が期待でき、また、幼児期にお泊まり会を体験させ、その後も効果的にエピソードを思い出させることで幼児期の読書活動を活発化し、子どもの読書離れ解決の一助となることも期待される。研究成果は2017年2月28日、科学雑誌「Heliyon」に掲載。