琉球大学大学院医学研究科薬理学の筒井正人教授、大学院生の喜名美香氏、坂梨まゆ子助教らの研究グループは、マウスに野菜に多く含まれる硝酸塩/亜硝酸塩が不足した餌を長期間与え続けると、カロリー摂取量が少なくても代謝症候群(メタボリックシンドローム)、血管内皮機能不全、および心血管死が引き起こされることを明らかにした。
代謝症候群は、内臓脂肪型肥満に高血糖・高血圧・脂質異常症などの動脈硬化を引き起こす症状が重複して発症した病態で、心筋梗塞、脳卒中、糖尿病などのリスクを増加させる。しかし、発症の原因として、カロリー過多、運動不足、遺伝、加齢などが報告されているが、その仕組みは十分に解明されていない。
一方、硝酸塩/亜硝酸塩が、生体の恒常性の維持に寄与する一酸化窒素の供与体であることが近年明らかになり、その新しい役割が注目されていた。
研究グループは、食事中の硝酸塩/ 亜硝酸塩の長期不足が代謝症候群を引き起こすという仮説を検証するため、1週間から22ヶ月にわたり、硝酸塩/亜硝酸塩が検出されない飼料を与えたマウスと通常飼料を与えたマウスを比較した。
結果、硝酸塩/亜硝酸塩が検出されない飼料を3ヶ月与えられたマウスでは、内臓脂肪蓄積、高脂血症、耐糖能異常、18ヶ月与えられたマウスでは、体重増加、高血圧、インスリン抵抗性、内皮機能不全、22ヶ月与えられたマウスでは、心血管死が引き起こされた。
研究グループは、この成果が食べ過ぎやカロリー過多ではない状態での、代謝症候群発症の要因となる食事成分の世界初の同定であるとし、また、明確な科学的証拠をもって、野菜の摂取が代謝症候群抑制に繋がるとしている。
沖縄県では、高齢者が長寿である一方で、働き盛り世代の突然死が全国トップという二極化が起きている。そのため沖縄県の医療行政において、代謝症候群の克服は喫緊の課題となっている。
論文情報:【Diabetologia】Long-term dietary nitrite and nitrate deficiency causes the metabolic syndrome, endothelial
dysfunction and cardiovascular death in mice