豊橋技術科学大学の地震災害工学研究室では、建物に設置した地震計の記録から、機械学習の技術を用いて、建物の被害状況を即時かつ高精度に判定する手法を開発した。地震直後の避難や建物の継続使用の判断に役立つことが期待される。
2016年の熊本地震では、複数の市役所が被災し避難や復旧の大きな障害になった。地震防災の拠点となる市役所や消防署などでは、地震直後に建物の被害状況を分析し、継続して使用できるかを迅速に判断する必要がある。これまでは、余震による建物倒壊の危険があるため、診断は原則として目視による外観調査に限られ、建物内部の被害状況は不明だった。
そのため、研究チームは建物に地震計を設置し、地震時の観測記録から建物の健全性評価を遠隔で行う技術を開発してきた。この方法では、インターネット・クラウドに保存した観測記録により建物の構造モデルの地震応答解析を行うことで被害程度を診断するが、解析に時間がかかった。
そこで、建物の構造モデルを使わずに、CNN(畳み込みニューラルネットワーク)という機械学習の方法を用いて、建物の被害状況を即時に判定する手法を開発。建物に設置された地震計の観測波形のウェーブレットスペクトルの画像から、被害の程度(無被害、軽微な被害、中被害、大被害、倒壊)や継続使用の可能性(安全、注意、危険)を遠隔で直ちに診断する。これまでより迅速な診断が可能で、建物の階数や構造が異なる場合でも適用可能であるとしている。
すでに、愛知県東三河地域の市庁舎には、開発したリアルタイム耐震診断システムが稼働中だ。これにより、迅速かつ精度の高い診断を可能とし、地域の防災力の向上が期待される。