国内におけるスポーツへの関心の高まりや国際競技力の向上に伴い、スポーツ現場で医療従事者が果たす役割も大きくなっている。特にアスリートのケガの処置や治療、試合会場での観客・スタッフの安全保持などを担うスポーツドクターはスポーツ現場やアスリートの競技活動に欠かせない存在であり、東京オリンピック・パラリンピックでも多くの医師が活躍した。一方で、高い専門性やスポーツへの造詣が必要とされながらアスリートのみを診察して活動するスポーツドクターは少なく、多くは一般の診療を行いながらその役割を担っている。
そこで順天堂大学スポーツ健康医科学推進機構(JASMS)では、スポーツとスポーツ医科学のさらなる発展のためにも、スポーツ現場で活躍する医療従事者の育成や活躍の場の整備・拡大、情報発信の強化が重要であると考え、現状把握のためにスポーツドクターの実態調査を行った。
調査は順天堂大学医学部附属の6病院に在籍するスポーツドクターを対象に実施した。
一般的にスポーツドクターといえば、ケガの応急処置や診察、治療の場面で活躍する整形外科を専門とする医師が知られている。しかし調査の結果、順天堂大学には、整形外科をはじめ産婦人科、循環器内科、総合診療科、リハビリテーション科、麻酔科、脳神経内科、救急科など、16診療科においてスポーツドクターが在籍しており、その人数は合計74名に上ることがわかった。
また、順天堂大学に在籍するスポーツドクターの活動は幅広く、球技・球技以外の種目あわせて26種目の競技現場で活動していることがわかった。内訳はサッカー、ラグビー、バスケットボール、野球、陸上、競泳など競技人口の多いスポーツだけでなく、ビーチサッカー、フットサル、自転車、格闘技、アーティスティックスイミング(AS)、射撃、パラサイクリングなど多岐にわたる。サポート対象のアスリートも、プロスポーツ、アマチュアスポーツ(日本代表、実業団、ユース、大学、高校、小学校など)問わず幅広い競技レベルだった。
今回の調査で、順天堂大学に在籍するスポーツドクターは、多くの専門性を生かして活動しており、整形外科医だけでなく、心肺機能、代謝機能、栄養、自律神経、そして感染症など内科的視点を生かしてサポートする内科医のスポーツドクターなどもおり、活躍の場は広がっていると言える。
今後、スポーツ医科学視点での診療科を越えた包括的なコンディショニングサポートやピッチサイドでの高度な医療技術が必要とされる昨今、JASMSを中心として、スポーツドクター同士の交流の場や活動状況の発表機会など横断的なつながりを形成することで、スポーツドクターとしてのスキルアップや活動の場の拡大を目指す。また、新たなスポーツドクターの育成や国際資格を含めた資格取得のサポートなどを進めていく。
また、看護師、薬剤師、理学療法士、アスレティックトレーナーなどにも対象を広げ、スポーツ現場での活動調査を実施する予定。「医学×スポーツ」に強みを持つ健康総合大学として、順天堂大学が有するスポーツ医科学の英知を社会に還元する取り組みを、さらに強化していく。
参考:【順天堂大学】スポーツドクター有資格者、総勢74名が在籍。所属する診療科も多岐に。~順天堂大学が学内のスポーツドクターの活動実態を調査~