北海道大学の石井哲也教授らの研究グループは、外来DNAをもつゲノム編集生物を遺伝子組換えではないと誤判断してしまう問題に取り組み、より信頼性の高い非組換え証明方策を見出した。
農業分野で遺伝子改変技術、ゲノム編集を用いた動植物の育種が急速に進んでいる。日本など少なくとも7か国は、事業者がゲノム編集農産品に外来DNAがないと証明すれば遺伝子組換え生物として規制をしない。しかし2020年、米国でゲノム編集による角なしウシを、ブラジル規制当局が外来DNAを見逃して非組換えと誤判断した問題が生じた。現状では、ゲノム編集植物や動物に外来DNAがないことを証明する方策の合意はない。
研究グループは、ゲノム編集で意図しない遺伝子組込みが起きた論文や、国外規制当局がゲノム編集動物を誤って組換えではないと判断したケースを詳細に分析。その結果、ゲノム編集農産品に外来DNAが存在しないと証明するには、まず、外来核酸(DNAとRNA)が①ゲノム編集の試薬や、②細胞培養の培地に含まれるか慎重に確認する。含まれる場合、③ゲノム中の組込みリスクがある3部位について、標的部位のDNAシーケンシングに加え、原理などが異なる複数のDNA分析法により得られた解析データをもって証明することが妥当と結論した。
一方、規制当局がこの外来DNA非存在の証明方策を一律に求めれば、全事業者に相応の負担がかかる。対話を経た社会的合意があれば、この外来DNA非存在の証明方策を緩和して施行することや、特定農産品については適用の見送りもありえるとしている。今回の研究を踏まえた提言が日本でのゲノム編集農産品のリスク評価体系の確立と合意の形成に寄与することが期待される。
論文情報:【Trends in Biotechnology】Proving that a Genome-edited Organism Is not GMO