国立精神・神経医療研究センター(NCNP)、日本ラグビーフットボール選手会、筑波大学のグループは、ジャパンラグビートップリーグ所属(当時)の男性ラグビー選手に実施したCOVID-19感染拡大前後の二時点の調査から、日本のアスリートのメンタルヘルス実態について、環境変化により不調が改善される一群がいる一方で、専門家による支援が必要な選手が一定数存在することを示した。
COVID-19感染拡大は、アスリートのメンタルヘルスにも影響を与えた。欧州サッカーリーグでの調査では、欧州諸国でロックダウン時には、感染拡大以前より不安症・うつ病が疑われる選手の割合が有意に高いとの報告がある。今回、日本のラグビー選手のCOVID-19感染拡大前と1年後のメンタルヘルスを調査し、感染拡大による環境変化の影響を検討した。
調査はCOVID-19感染拡大前(2019年12月~2020年1月)と感染拡大中(2020年12月~2021年2月)に実施。回答した男性ラグビー選手、それぞれ251名と227名のデータを比較分析した。感染拡大前では、何らかのメンタルヘルス不調を抱える選手の割合は42.2%(心理的ストレス32.2%、中等度~重度のうつ不安症疑い10.0%)、1年後の感染拡大中には、不調者の割合は25.2%(心理的ストレス15.0%、中等度~重度のうつ不安症疑い10.2%)で、心理的ストレスを抱える選手の割合が有意に減少し、中等度~重度のうつ不安症疑いの選手の割合には違いがなかった。
この結果は、環境変化により状態が改善される比較的軽症な一群がいる一方で、環境調整に加えて専門家の支援を要する一群が一定数存在する可能性を示しているとし、国内スポーツ組織に、体系的なメンタルヘルスケアシステムを構築する必要性を示した知見としている。