理化学研究所統合生命医科学研究センターと東京大学医学部附属病院の共同研究チームは、免疫機能の個人差に関わる遺伝子カタログを作成し、免疫疾患の遺伝的メカニズムの新しい解析手法を開発した。複数の免疫細胞を対象とした研究はアジア初の試みだという。

 ヒトの健康状態や免疫機能の一部は、DNA配列の個人差によって決まる。近年、免疫疾患の発症に関与するDNA多型(リスク多型)が多く同定されてきているが、リスク多型がどの免疫細胞において、また、どの遺伝子発現量に影響しているかは不明であった。

 今回、研究チームは、105人の健常人から5種類の主要な免疫細胞を回収し、遺伝子発現量の個人差を次世代シーケンサーにより網羅的に解析。その解析結果から、免疫機能の個人差に関わる遺伝子カタログ(eQTLカタログ)を作成した。
さらに、このカタログを応用し、免疫疾患の遺伝的メカニズムの全体像を評価する新規手法を開発。一例として、CD4陽性T細胞におけるTNFパスウェイの活性化は、関節リウマチの病態で重要な役割を持つことなどが確認できた。

 本研究で得られたeQTLカタログや解析手法は、自己免疫疾患に加え、花粉症・喘息・がんなどの免疫が関わる多くの疾患に適応可能である。今後、遺伝的メカニズムに基づいた創薬標的の探索と治療法の開発への貢献が期待できる。

論文情報:【Nature Genetics】Polygenic burdens on cell-specific pathways underlie the risk of rheumatoid arthritis

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