理化学研究所の相田卓三グループディレクター(東京大学教授を兼任)、物質・材料研究機構の佐々木高義フェローらの研究グループは筋肉のように動くヒドロゲルの開発に成功しました。ヒドロゲルは水分子を網目状の物質の間に閉じ込めることで流動性を失ったゼリー状の物質で、人工筋肉の実現に大きく近づくことになりそうです。
従来の動力源には金属からできたモーターや油圧装置などがあります。これらは大規模な作業を行うのに適しています。一方、工場や医療・リハビリテーションの現場などでは人間の作業を補助するための、軽く柔らかい特性を持った動力源が求められています。そういった動力を実現する候補としてヒドロゲルから作られる人工筋肉が注目されています。しかし従来のヒドロゲルでは動作が遅いことや水中での利用に限られているなどの問題がありました。
今回の研究では静電気で反発するシートの間にヒドロゲルを挟んだサンドウィッチ状の構造を作りました。外部からの刺激によりヒドロゲルの状態を変化させることで、シート間の反発力を増減させれば構造全体を伸び縮みさせることができると考えたのです。今回の研究では温度によって水との親和性が変化するヒドロゲルを選びました。加熱により水との親和性が下がると、シート間の反発力が強まり、わずか1秒で1.7倍の長さまで伸長伸長しました。さらに、これを冷却するとやはり1秒で元の長さまで収縮することも確認できました。さらに、この伸縮の間は全体の体積が一定に保たれていることも明らかになりました。これは、伸縮の際に水を出し入れする必要が無いため、水中以外のあらゆる環境で動作することを意味しています。
これによって質の高い人工筋肉の実現に大きく近づきました。また、動作原理自体も分子を使った動力源としては前例がないもので、今後の関連する研究にも大きな影響を与えそうです。
出典:【理化学研究所】内部の静電反発力のオンオフだけで動くヒドロゲル-速く、大きく、一方向性の運動を繰り返す、夢の人工筋肉の実現へ-