東京大学空間情報科学研究センター、磐梯町および株式会社LIFULLは、磐梯町が保有する過去5年分の水道使用量のデータを利用して新たな空き家候補(空き家予備軍)を発見する簡易的なモデルの有効性を検証した。
福島県磐梯町では、2020年度に町内全域の空き家実態調査を実施したが、単身高齢者、高齢者夫婦世帯が増加する中、変化する空き家の発生状況を把握する施策がなく、さらに、放置すれば放置するほど家屋の状態が悪化するため、可能な限り早く空き家を特定し活用に結びつけていくことが課題となっていた。
そこで今共同研究では、水道使用量のデータのみを利用する簡易的なモデルを利用し空き家予備軍を発見するだけでなく、新たに空き家の可能性があると発見された物件に対して、固定資産台帳・住民基本台帳を結合し、「所有者や連絡対象者となる人を特定するための」基本的な情報の突合を行った。これによって、住宅や事業用としての活用物件の新たな候補として、自治体の空き家バンクへの登録を促すアプローチが可能となった。
外観目視(2020年度に実施した空き家実態調査)で空き家と判定した結果と比較すると、今回の水道使用量に基づく簡易的なモデルは、空き家の「再現率(外観目視基準で空き家と判定した物件の内、どれだけ空き家と予測できたか)」が82.6%だった。外観目視・水道使用量で、「空き家」の定義※を拡大することで、全体の住所から空き家予備軍を追加で8~17%程度抽出できることがわかった。
一方、外観目視で非空き家と判定したが、今回の水道使用量に基づく簡易的なモデルで空き家と予測した物件については、空き家予備軍である可能性があるため、LIFULLと連携し、磐梯町が所有者に対して追加調査を実施。その結果、外観目視で非空き家と判定したが、今回の水道使用量に基づく簡易的なモデルで空き家と予測した物件では、空き家の適合率(空き家と予測した物件の内、どれだけ正解だったか)は68.4%であった。
また、空き家所有者へのアンケート調査の回答率は26.7%で、回答の対象物件は全て空き家であった。空き家所有者が居住地から空き家物件までの移動にかかる時間は車・電車等で1時間を超えるなど、所有者の約6割が「現地まで通うことが大変」と回答した。また、空き家物件の使用目的について、「墓参りや仏壇を拝むため」も同じく約6割と高く、空き家物件を「手放すことは考えていない」「将来住みたいと考えている」と回答した所有者は約4割であった。一方で、約4割の空き家所有者は「売却・賃貸・解体を考えている」と回答しており、自治体の空き家バンクへの登録等を促す機会の創出に有効であることが示唆された。
※「空き家」と定義するには、当該建築物等を現に意図をもって用いていないものであり、一般的な空き家調査に基づき、外観目視および行政区長・隣接居住者への確認によって空き家と判定する。今回は、長期的な水道の不使用を空き家として判定し、空き家調査によって空き家と特定された情報と突合し、実際に空き家であったかの確認を行った。
参考:【磐梯町】東京大学空間情報科学研究センター、磐梯町、株式会社LIFULL水道使用量を利用して空き家予備軍を発見する簡易的なモデルの有効性を検証