樹木は、光を得るために高く大きく成長しなければならない一方で、自身の重さに耐えて自立した状態を維持しながら実現できる高さには、力学的に限界がある。
しかし実際には、自然界の樹木は非常に安定して高く大きく成長している。すなわちここに、樹木が進化の過程で獲得してきた「重力に効率よく打ち勝つための仕組み」が秘められていると考え、北海道大学の研究者たちは、樹木の「重量物の配分バランス」と「実現可能な最大高さ」の関係を構造力学の理論を用いて検討した。
樹木がもつ枝葉の影響を考慮し、様々な重量分布の樹木を表現できるよう、密度が連続的に変化する計算モデルを導入して解析することで、樹木の重量分布が成長可能な最大高さにどのような影響を与えるかを定式化することに成功した。この結果からは、「枝葉重量の増加」と「重量物の上部への集中」が最大高さを低下させる要因になるが、枝葉重量を増加させたとしても重量物を下部に集中させれば最大高さへの影響を小さく抑えることができることが判明した。
これを踏まえて実際の樹木をみてみると、枝葉が一切ない場合と比較しても最大高さが約1%~15%ほどの減少に収まるような、巧みな枝葉の分布となっていることがわかった。上から下に向かって枝葉を増やしていくという、最大高さを確保するために合理化された枝葉の重量配分は、同時に、バランス良く葉に光を受けて光合成を効率化させる配置にもなっており、「生存するためになるべく多くの枝葉を広く分布させながら高さも確保する」理想の重量配分を自然界の樹木は達成しているといえる。
樹木の力学的合理性を明らかにした本研究成果は、生物の智恵を取り入れた新しい構造デザインや新材料の創製にもつながることが期待される。
論文情報:【Scientific Reports】Mathematical modelling to determine the greatest height of trees