福井大学と筑波大学の研究グループは、スギ花粉症に対する「舌下免疫療法」の応答性に関連する遺伝子型を同定。この遺伝子型を保有する患者は、保有しない患者より治療応答性が低いことが判明した。これにより、スギ花粉症に対して舌下免疫療法の治療効果を事前に予測できるようになる。
花粉やダニ(ハウスダスト)抗原を原因とするアレルギー性鼻炎は日本人の2人に1人が罹患する。舌下免疫療法は唯一根治性のある治療だが、2、3年間継続して治療効果を長期的に観察する必要があり、2~3割の患者は満足な効果が得られずに治療を終了している。そのため、舌下免疫療法開始時に応答性を予測するバイオマーカーの開発が望まれていた。
研究グループは、HLA遺伝子(白血球表面に発現する分子)のうち、スギ花粉抗原ペプチドが結合する細胞表面の結合ポケット「HLA-DPβ1」に注目し、その結合ポケットを構成するHLA遺伝子型によって治療応答性が異なるのではないかと考えた。
今回、203名のスギ花粉舌下免疫療法患者の治療応答性とHLA遺伝子型を分析したところ、HLADPB1*05:01遺伝子型を保有する患者は保有しない患者と比較して治療応答性が低いことを確認。つまり、スギ花粉症では細胞表面に存在する抗原ペプチド結合ポケットであるHLA-DPβ1の立体構造がスギ花粉舌下免疫療法の応答性に関与していた。
今回、世界で初めて舌下免疫療法の治療効果が予測可能な薬理遺伝学的バイオマーカーを発見。これにより、簡便・安価に実施可能な、HLA遺伝子の新たな薬理遺伝学的検査を提案した。今後、スギ花粉症に対して舌下免疫療法の治療効果を事前に予測し、患者にとってより良い医療の提供が可能になるとしている。