筑波大学生命環境系の本庄賢特任助教らの研究グループは、キイロショウジョウバエを材料にした研究から、痛覚神経の機能に重要な新しい遺伝子を多数発見したと発表した。慢性疼痛疾患のメカニズム解明と新鎮痛法の開発につながるという。

 痛覚神経は傷害や高温などの危険を知らせる感覚神経細胞で、そのような「侵害刺激」を脳に伝えることで痛みの知覚が生じる。痛みは身を守るための警告信号だが、傷や炎症など明確な危険状態がないのに異常に痛む場合は、慢性疼痛疾患などの病気とされ、世界中に多くの患者がいる。痛覚神経の異常が要因の1つとみられ、遺伝子レベルでの解明が進められているが、これまでに大きな進展はなかった。

 本研究では、キイロショウジョウバエを利用した大規模な遺伝子探索により、これまで知られていない痛覚神経の機能に関わる遺伝子を多数発見した。今回見つかった遺伝子はショウジョウバエ幼虫の痛覚神経に強く発現(遺伝子から目的のタンパク質やRNAが生産されること)しており、痛覚神経でその遺伝子の機能を抑えると、熱に対する痛覚反応が鈍くなったり過敏になったりすることから、痛覚神経の機能に重要だと考えられた。ヒトとキイロショウジョウバエの遺伝子データベースの比較から、今回見つかった遺伝子の半数以上がヒトにも存在し、さらに、先行研究との比較から、その多くがマウスの痛覚神経でも強く発現していることもわかった。

 今回の結果は、本研究で発見された遺伝子がヒトを含めた哺乳類の痛覚神経の機能にも重要であることを示しているという。今後、ヒトの痛覚神経機能を遺伝子レベルで解明できれば、慢性疼痛疾患の治療や予防に役立つ薬の開発が期待される。

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