東京大学生産技術研究所の田中肇教授らの研究グループは、結晶ゲル形成の素過程を3次元共焦点顕微鏡でリアルタイム観察することにより世界で初めて明らかにした。
液体に分散した粒子に引力が働くと、網目状につながり合ったゲル構造が形成される。このゲル化現象は、寒天のように日常的に身の回りで見られる現象である。通常のコロイドゲルはコロイド粒子がランダムな構造のまま凝集して固まった状態であるが、以前から、”ある条件下”では、結晶がつながりあったゲル状態が形成されることが知られていた。
今回、同グループはその動的過程の直接観察に初めて成功した。結晶ゲル形成の過程で、まず「コロイド粒子の濃度が高い液体相」と「濃度の低い気体相」に分離される。その過程で液体相のネットワークが形成され、その中に結晶核が出来る。結晶核が成長してネットワーク構造の表面に達し、直接、気体相と接触することで気体相のコロイド粒子が結晶表面に凝結。結果、表面の滑らかな多孔質結晶体を形成することを明らかにした。
この過程は、過冷却水と氷(氷晶)の混合体を含む雲において、氷晶が急速に成長する過程と同じであり、今回同グループは、世界で初めて冷たい雨の形成の素過程を微視的レベルで観察したと言える。
論文情報:【Nature Materials】Formation of porous crystals via viscoelastic phase separation