信州大学医学部と横浜市総合リハビリテーションセンター(YRC)の共同研究チームは、横浜市の疫学調査で7歳までに把握された自閉スペクトラム症(ASD)の人たちを対象とした成人期の長期追跡調査「Y-LABiCスタディ」を実施。信頼性の高い結果が得られた。
ASDの人たちの児童期から成人期までの長期経過は不明点が多い。今回、横浜市港北区で1988年~1996年出生の、7歳までにASDと特定された278名を調査対象とした。全員が20歳を超えた後、170名(61.2%)から同意を得て追跡調査(2017~2020年)を実施。成人期の総合的な社会的機能(仕事、住居など自立の度合い、友人関係などから評価)、社会参加や日常生活の実態について、本人・家族への面会によるインタビューを行った。
その結果、参加者(平均24.6歳)の心理社会的転帰(現状)は、「とても良好」が全体の13.7%、「良好」が25.0%、「まあまあ良好」が31.0%、「不良」が25.6%、「とても不良」が4.8%となり、海外の先行研究よりも転帰が良い人の割合が多かった。
また、大多数が仕事と教育(全体の96.4%)、スポーツ(82.1%)、余暇活動と趣味(98.8%)に参加しており、日常生活で家事やセルフケアを行っている人の割合は一般人口と同程度だった。5歳時のIQ50以上ではIQによる転帰の差は認めなかった。住居の確保や就労について完全な自立は難しいものの、多くは家庭外の多くの活動に参加し、家事やセルフケアに従事していた。
今回の調査では、自立の度合いに加え社会参加や日常生活の状態に注目。ASDの人たちの成人期の心理社会的転帰が一般人口や異文化間で比較できる可能性が示されたとしている。