慶應義塾大学病院が株式会社Xenomaと共同して開発した着衣型ホルター心電計(一般的名称は長時間心電用データレコーダ)の保険適用が2022年3月1日より開始された。受診者の装着負荷を低減し、来院を要しない郵送による検査の実施が可能となる。

 長時間心電検査は不整脈や虚血の検出などに頻繁に使用され、循環器領域で汎用されている。通常の臨床では2誘導(2つの心電図波形)で24時間行うことが一般的だが、装着・取り外しに医療従事者の関与が必要なため来院日数が増加することや、ケーブルや記録機によって検査中の動作が制約されることから受診者が検査を忌避することも少なくないなど、従来のホルター心電計による計測にはさまざまな課題があった。

 そのため、研究グループは専門的知識を有さない受診者でも自身で装着が可能な3誘導(3つの心電図波形)の心電計測システムを共同で開発。本システムでは、医療機関において長時間心電検査の処方を受けた受診者はe-skin ECG計測用シャツを着用し、シャツにe-skin ECGデータレコーダを装着することにより計測を行う。受診者が検査キットを返送後、心電データの解析結果がXenomaから医療機関に提供され、解析結果をもとに医師による診断が行われる。

 慶應義塾大学病院での実証実験を経てe-skin ECGデータレコーダがクラスⅡの医療機器として認証を取得(2022年1月)。今回、保険適用が開始されたことにより、医療機関での実用化に向けて制度上必要な準備が整った。

 開発したシステムを活用した検査の実用化にあたってはXenomaが主体となって検査キットの提供やデータ解析を実施。医療機関からの検査申込は2022年5月より受付を開始するとしている。

参考:【慶應義塾大学】患者自ら装着可能な着衣型心電計測システムによる長時間心電検査を実用化-医療機器の保険適用開始-(PDF)

慶應義塾大学

大学ジャーナルオンライン編集部

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