新潟大学の西澤正豊教授、池内健教授らのグループは若年性認知症の原因であるHDLS(軸索スフェロイド形成を伴う遺伝性びまん性白質脳症)の画像を分析することで、共通する特徴を抽出することに成功しました。さらにこれを世界初のHDLSの診断基準として提唱しました。
HDLSは65歳未満に発症する若年性認知症の原因疾患の一つであり、これまでは診断をすることが困難でした。2012年に原因遺伝子が発見されてから、遺伝子解析による診断が可能となったものの実地臨床での診断は容易ではありませんでした。そのため診断基準を策定することが望まれていました。
今回の研究ではこれまでに解析した24症例と文献から得た77症例の画像などを解析することで、HDLSの特徴を抽出しました。さらに、これらの特徴に基づいて発症年齢、臨床症状、遺伝子などからなる主要項目、支持項目、除外項目から構成される診断基準案を策定しました。この基準を用いると95%以上の確率で診断することが可能でした。また、他の脳症との鑑別においても高い確率で鑑別することが可能であることを示しました。これらの結果から基準案はHDLSの臨床診断に大きく寄与すると考えられます。
HDLSは日本で比較的多い若年性認知症の一つであり、この基準を用いることによって正しく診断される機会が増えれば病理解明や治療法開発に向けて研究が進むことが期待されます。さらに、認知度の低さから患者や家族の社会的・経済的負担が大きく、療養環境も整備されていないなどの問題もあります。診断基準の確立によって認知度が高まり、こうした社会問題の解決にもつながることでしょう。