慶應義塾大学の金井隆典教授らの研究グループは、植物由来の染料が活動性の潰瘍性大腸炎の治療に有効であることをプラセボ(偽薬)対照臨床試験において科学的に実証した。
青黛(せいたい)はリュウキュウアイ、アイなどの植物から抽出した粉末の生薬で、日本では染料(藍)や健康食品など、中国では古くから潰瘍性大腸炎に対する漢方薬として用いられてきたが、その有効性や安全性に関する検証はなされていなかった。近年は日本でも、インターネット情報や噂、口コミなど不確かな情報をもとに自己購入や民間療法で使われる事例があり問題視されていた。
研究グループは、青黛に含まれる成分(インジゴ、インジルビン)が粘膜治癒を促進するとされる物質「インドール化合物」である点に着目。これまでに潰瘍性大腸炎患者に対し、高い有効性を示す可能性を少数例の単施設研究で示唆してきた。
今回、安全な投与用量の設定を含む検証のため、中等症以上の活動期潰瘍性大腸炎患者に対し、プラセボ(偽薬)との比較を含む全国33施設の多施設共同臨床試験を行った。
その結果、青黛は70~81%という高い有効性を示し、また、症状消失を示す臨床的寛解率、粘膜治癒率(内視鏡的寛解率)も高率だった。ただし、一過性肝障害や頭痛など軽度の有害事象が患者5%以上にみられた。
今回の研究と関連なく、民間療法として青黛を内服した患者が肺動脈性肺高血圧症を発症した事例を受けて、厚生労働省は、患者が自己判断で青黛を服用しないよう医師が指導する旨の注意喚起を各関係学会等へ行った(平成28年12 月)。この後、安全性を考慮して今回の臨床試験を中断した上で結果が公表された。
今回の成果から、今後の潰瘍性大腸炎の完治を目指した病態の解明と新規治療薬の開発が期待される。なお、今の段階では患者の自己判断による青黛の使用には安全性に懸念があり、推奨していない。今後、動物実験を含む研究により安全性の検証を進めていくとしている。