関西医療大学大学院 研究科長の鈴木俊明教授らの研究グループは、麻痺側母指の動きが困難な脳血管障害片麻痺患者において、麻痺側手指全体の伸展運動イメージに非麻痺側手指全体の伸展運動を組み合わせることが効果的であると発表した。
麻痺側母指球上の筋群の筋緊張が亢進した脳血管障害片麻痺患者に対する運動イメージを用いた適切な運動療法を考案するために、鈴木俊明教授らの研究グループは、脊髄前角細胞の興奮性の指標であるF波を用いて効果的な運動療法の方法を検討した。
運動療法は、4つの運動イメージを用いた方法を設定した。課題1は麻痺側母指伸展イメージ、課題2は麻痺側手指全体の伸展イメージ、課題3は麻痺側母指伸展イメージと非麻痺側母指伸展運動を同時に実施、課題4は麻痺側手指全体の伸展イメージと非麻痺側手指全体の伸展運動を同時に実施した。課題前と課題中に麻痺側正中神経を刺激して母指球上の筋よりF波を記録した。
結果は、課題4の振幅F/M比は他の課題より低い値であった。この結果は、麻痺側手指全体の伸展イメージと非麻痺側手指全体の伸展運動を同時に実施する運動療法が、麻痺側母指球上の筋群の脊髄前角細胞の興奮性を低下させることがわかった。
そこで、麻痺側母指の動きが困難な脳血管障害片麻痺患者には、麻痺側母指に注目した運動イメージを行うよりも麻痺側手指全体を伸展させる運動イメージを行うことが効果的であり、麻痺側手指伸展運動イメージと非麻痺側手指伸展運動を同時に行うことが最も有効であることがわかった。