京都大学とBonBon株式会社は、共同研究により、3Dアクションゲーム内の「動き回る」「狙う」「隠れる」「当てる」などの挙動データから、ユーザーの「運動機能」「注意力」「抽象思考」「識別力」などの複数の認知機能を測定することに成功した。エンターテイメント性の高い複雑なゲームが、デザイン・設計次第では複数の認知機能の並行計測に利用可能であることが示された。

 ゲームには人を惹きつけ、やる気をもって課題に取り組ませる力があることから、ゲームで認知機能を測ることができれば、従来型の検査が難しい子供や通院が難しい方の認知機能を評価したり、長期の取り組みが必要な認知機能のモニタリングをより日常生活に近いタスクにすることができるかもしれない。このような動機から、ゲームを通して認知機能を測る研究は以前から行われているが、一般的に用いられるのは、ゲーム性を削って一つの認知機能しか使わないほど単純になったゲームか、特にまとまりのないミニゲームの繰り返しである。

 本研究では、市販のゲームに見られるような複雑で面白いゲーム性と、認知機能検査に見られるような要素の切り分けが両立できるかどうかを検証することにした。BonBon株式会社が認知機能計測用に開発中だったアクションゲーム「Potion」のデータと認知機能検査の結果を比較することで、ゲーム内の要素と認知機能検査のスコアが連動しているか等を分析した。

 その結果、ゲーム内の測定指標と認知機能検査の結果(例えば、草むらを使って索敵を逃れる動きと、抽象的思考を測るテストにおける正答率)には相関が認められたとしており、複雑なゲームを使って認知機能の多面的な測定が可能であることの実証に成功した。

 今後、ゲームで認知機能を測定する技術が進歩すれば、より複雑な認知プロセスの研究に貢献する可能性もあり、エンターテイメントの枠を超えたゲームの学際的な発展も期待される。

論文情報:【Scientific Reports】Novel 3-D action video game mechanics reveal differentiable cognitive constructs in young players, but not in old

京都大学

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