大阪大学大学院医学系研究科の舘野丈太郎特任助教と松本寿健特任助教らの研究グループは、外傷による死亡率の高い集団(フェノタイプ)を同定し、加えて高死亡率フェノタイプには過剰炎症と凝固障害が関与することを明らかにした。

 外傷関連死は全世界で年間約450万件の報告があるが、患者背景、損傷の部位・程度が複雑に組み合わさった異質性により、どれ一つとして同じ外傷は無く、病態の考察や治療効果の正しい評価が困難となっている。

 こうした外傷に対して、本研究では、機械学習を用いることにより潜在的な死亡率の高いフェノタイプの解明を試みた。日本外傷データバンクから71,038人の外傷患者を解析対象者とし、外傷初期診療データを用いた機械学習による手法から、異なる11個の外傷フェノタイプを同定し、そのうち4個の高死亡率フェノタイプを見出した。

 続いて、各フェノタイプの特性を検討するため、同フェノタイピングを大阪大学高度救命センターへ搬送された90人に適応し、患者血清を用いたプロテオーム解析を行った。結果、高死亡率フェノタイプは他のフェノタイプと比較して急性炎症反応の増強、補体活性化経路の調節異常などの過剰炎症、凝固・血小板脱顆粒経路の調節低下などの凝固障害を示すことがわかったとしている。

 本研究成果により、初期の診療データから死亡率の高い外傷フェノタイプを特定できる可能性があり、先制治療やフェノタイプに応じた新たな治療戦略の開発につながることが期待される。

論文情報:【Critical Care】Development of clinical phenotypes and biological profiles via proteomic analysis of trauma patients

大学ジャーナルオンライン編集部

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