物質・材料研究機構と横浜国立大学の研究グループは、自己治癒セラミックスの治癒の仕組みを解明し、航空機エンジンが作動する1000℃において最速1分で亀裂を完治できる自己治癒セラミックスを開発した。
自己治癒セラミックスは、人の骨のように亀裂を自律的に治癒することができ、1995年に横浜国立大学の研究グループによって発見されて以来、航空機エンジンタービン用の次世代耐熱材料として世界的に注目されてきた。しかし、治癒の詳細なメカニズムは未解明であり、加えて1200~1300℃の限られた温度領域でしか短時間での亀裂の完治ができないという問題があり、幅広い温度域で高速で完治できる新たなセラミックスの開発が望まれていた。
本研究グループは、セラミックスの治癒機構を調査し、自己治癒セラミックスの治癒が、亀裂から侵入した酸素とセラミックスに含まれる炭化ケイ素が反応して二酸化ケイ素が合成され(炎症)、セラミックスの母体であるアルミナと二酸化ケイ素が反応して亀裂を充填し(修復)、結晶化して強度が回復する(改変)という、骨の治癒に似た三段階で進むことを明らかにした。
さらに、骨の治癒を促進する体液ネットワークをヒントに、セラミックスの治癒を活性化する酸化マンガンを結晶の境目に配置することで、従来材では1000℃で1000時間かかっていた亀裂の治癒時間を、最速1分まで短縮させることに成功した。
この成果をもとに、研究グループは今後、治癒活性相の種類を適切に選定し、「割れが入っても壊れない」優れた自己治癒機能を自在に付与した革新的高温用セラミックスの開発を目指していくという。