東北大学大学院の永富教授らの研究チームは、高強度ランニング運動におけるL-メントールの飲用が運動中の息苦しさを緩和し、持久運動能力を伸ばすことを初めて実験的に明らかにした。
L-メントールには冷感作用があり、暑熱対策に使用され、また喉の痛みや鼻詰まりの緩和などにも使われている。しかし、持久運動中の息苦しさと持久運動能力に及ぼす影響についての研究はなかった。
そこで、研究チームはエリートランナーを対象に高強度ランニング(最大心拍数の90%前後の速度一定のトレッドミルランニング)テストを行い、ランニング中の息苦しさと疲労困憊に至るまでの時間(持久運動能力)を、L-メントール溶液摂取の有無の違いで比較した。
その結果、高強度ランニング中のL-メントール溶液の摂取は、水の飲用よりも運動中の息苦しさを緩和し、持久運動能力を伸ばした。また疲労困憊後は、水の飲用のみでは筒状の吸気抵抗を介して呼吸すると苦しさ(呼吸困難感)を示したが、L-メントールを摂取しておくと苦しさを感じなくなった。運動中の心拍数はL-メントールの有無で違いはなく、呼吸困難感の緩和が持久運動能力を延長させたと考えられた。
L-メントールは通常の食品に含まれる量や濃度の範囲であり、また呼吸循環器系に特別なアドバンテージも与えないため、ドーピングには相当しない。また、ランニングなどの持久運動習慣のない人や疾病を持っている人でも、運動による息苦しさを緩和することで運動に対する心理的な抵抗感を小さくし、リハビリテーションや運動療法に対する受容性を高めることが期待されるとしている。