佐賀大学医学部附属病院薬剤部の島ノ江千里教授、祖川倫太郎氏、同医学部社会医学講座予防医学分野のグループは、不眠症で睡眠薬を週1回以上定期的に服用している人の死亡リスクが高いことを、日本人約10万人の調査データを用いて明らかにした。
本研究は、約10万人の日本人一般住民を追跡している日本多施設共同コーホート研究(J-MICC study)により、2004年から2014年に実施された、全国11エリアの調査データの解析を行ったもの。このうち、がんや生活習慣病(糖尿病、循環器疾患など)の併存による影響が懸念される対象者を除外し、最終的に約6万人の解析を行った結果から、不眠症で睡眠薬を服用している日本人の死亡リスクを初めて示した。
睡眠薬を服用している人では、服用していない人と比較して、循環器系、神経系、損傷、中毒、および外的要因が関連する死亡がより多く認められることがわかった。中でも、男性および60歳未満の人たちで高い死亡リスクが示されたとしている。よって特にこれらの人たちは、より慎重に薬物療法のリスクとベネフィットを考えながら、不眠症のコントロールをする必要があることが示唆されたといえる。
本研究結果は、ベンゾジアゼピン系睡眠薬が不眠症治療の主翼を担ってきた2014年までの調査結果を用いたものである一方、2014年以降、不眠症の薬物療法に対する薬物選択の幅は広がっている。そのため今後、個々の睡眠薬による不眠症治療の長期的予後についての評価も必要となるだろう。より安全な薬物療法に加えて、非薬物療法も含め、安全かつ効果的な不眠症治療が確立されることが期待される。