筑波大学の松井崇助教らの研究グループは、高糖質食摂取と運動を組み合わせたアスリートのスポーツコンディショニング法が、脳内の学習・記憶を担う海馬でもグリコーゲン量を増加させる効果を初めて発見した。1週間で認知機能を高める世界初の脳標的コンディショニング法の確立を目指すという。
グリコーゲンローディング(Glycogen Loading;GL)は持久性アスリートのレース前1週間のコンディショニング法として古くから普及しており、筋内貯蔵エネルギーであるグリコーゲン量を増加させ、持久性能力を高める。研究グループは、海馬でもアストロサイト(神経を取り囲むグリア細胞の一種)に貯蔵されるグリコーゲン(海馬グリコーゲン)が、認知機能を高める長期間の運動トレーニングで増加することをすでに報告している。
今回、ラットに高糖質食(カロリー比70%の糖質)摂取に加え、初日に激しい運動、その後3日間に軽い運動を課し、最後の3日間に休養させるGLを実施。脳グリコーゲン測定装置を用いてGLが海馬グリコーゲン量に及ぼす影響を検討した。さらに、通常糖質食(カロリー比60%の糖質)により運動条件の検討も行った。その結果、1週間という短期間のGLが長期トレーニングと同様に海馬グリコーゲン量を高め、その効果は高糖質食ではなく、「1週間前のキツめの運動」によるものであったことから、「海馬GL」として新たに提案した。
今後、海馬GLは、2020年東京オリンピック・パラリンピックに向けたアスリートのハイパフォーマンスはもちろん、受験生や社会人の認知パフォーマンス発揮を助ける新たな運動・栄養戦略として役立つことが期待される。
論文情報:【Scientific Reports】Hyper-hippocampal glycogen induced by glycogen loading with exhaustive exercise