筑波大学の征矢英昭教授と中央大学の檀一平太教授の共同研究グループは高齢期では身体持久力が高い人ほど認知機能が高いことを発見しました。運動で脳が若返るかどうかを調べる上で重要な手掛かりを得ることができました。

 超高齢社会において高齢者の認知機能の低下が大きな社会問題となる中、年を重ねても認知機能を高く保っている人に共通する要因に関心が集まっています。近年、心臓・血管機能を高めること、すなわち持久力を高めるような軽度の運動習慣が認知機能の維持に有効であること考えられるようになってきました。しかしこれらの直接的な関係を調べた研究は例が少なく、良く分っていませんでした。

 これらの関連性を明らかにするために研究グループでは、60名の健常な高齢男性を対象に持久力と認知機能の関係を調査しました。持久力の指標には換気性作業閾値という値を用いました。軽度の運動をしているうちは必要な酸素の量と吐き出す二酸化炭素の量は一定割合で増加していきますが、徐々に運動を激しくしていくとあるところで酸素に比べて二酸化炭素の排出量が急激に増加し呼吸が苦しくなってきます。この時の酸素摂取量を換気性作業閾値といい、これが高い程日常生活の運動を楽に行うことができます。また、認知機能の指標には老化によって衰えやすい実行機能という能力をテストしました。これは目的のために思考や行動をコントロールする能力です。

 こうした調査の結果、換気性作業閾値が高い人では実行機能も高くなることが分かりました。つまり日常生活の活動性を少しでも保っておくことが脳の老化を防ぎ、認知機能を高く維持することにつながることを示唆しています。今後は女性についても同様の結果が得られるかも検討する必要があります。またトレーニングによる持久力の向上で認知機能の変化を観察することで、脳の若返りが可能かどうかも調査していくとしています。

出典:【中央大学】身体の持久力を保つことは脳の老化を防ぐ!

大学ジャーナルオンライン編集部

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