京都大学の市川正敏講師らをはじめとする共同研究グループは、繊毛虫テトラヒメナが壁面付近を泳ぐ際の動きを観測し、岩や石などの壁面へと集まってくるしくみを解明した。
テトラヒメナやゾウリムシなどの繊毛虫は、池や湖などの広い空間を遊泳していると思われがちだが、実際には、池の底や石、葉っぱの表面などの壁面付近に多く分布していることが知られている。壁面には餌が堆積しやすく、周りの流れも弱いため、繊毛虫にとっては生きやすい環境であるといえるが、繊毛虫がどのようにして味も匂いもない壁面を検知して壁面上をスライドし続けているのか、そのメカニズムについては不明であった。
そこで同研究グループは、テトラヒメナが壁面付近を泳ぐ際の動きを実験で観測し、計測結果を流体シミュレーションにより検証した。その結果、「推進力を生み出す繊毛の機械的な刺激応答特性」と「繊毛虫の細胞形状」という2つの単純な要素が、繊毛虫の壁面スライド運動に大きく寄与していることが明らかになった。それにより、餌を食べる時に壁を這う運動と、餌場を探して壁から壁へと高速運動する2つのパターンを自動的にスイッチしていることが分かった。
特定の化学物質に向かって動く走化性などの「走性」と呼ばれる性質が活発に研究されているが、本成果は新たに、繊毛虫が機械的な仕組みによって走性と同等の機構を持っていることを初めて示したものである。