日本学生支援機構では、奨学金の返還者の属性を把握するため、毎年、「奨学金の返還者に関する属性調査」を実施。今回、2016年度の調査結果を公表した。

 調査対象は、2016年11月末時点において奨学金返還中の者。3か月以上延滞している者のうち、無作為に抽出した19,623人と、延滞していない者のうち、無作為に抽出した9,695人。回答率は、延滞者2,838人(回答率 14.5%)、無延滞者2,402 人(回答率 24.8%)だった。

 調査によると、「奨学金がどのように役に立ったか」について、延滞者では「奨学金のおかげで進学可能となった」と回答した比率が最も高く58.8%。無延滞者では「家計の負担を軽減できた」と回答した比率が最も高く64.7%で、いずれも奨学金が有効に活用されていることが確認できた。

 また、奨学金の返還義務の認識については、「申込手続きを行う前」に認識している比率は、無延滞者は89.1%であるのに対し、延滞者では50.5%。申込手続きまでの返還義務の認識が十分ではないことがうかがえた。また延滞者では、貸与終了後に返還義務を知った者の合計は20.7%で、その半数の11.5%は「延滞督促を受けてから」知ったと回答。

 延滞が始まった理由については、「家計の収入が減った」が69.2%で最も高く、次いで「家計の支出が増えた」43.0%、「入院、事故、災害等にあったため」19.2%、「忙しかった」14.3%と続いた。

 また、返還困難者救済のための「返還期限猶予制度」の認知度については、2014年から3年間の推移をみると、延滞者で7.7ポイント(2014年度64.3%→2016年度72.0%)、無延滞者で3.8ポイント(2014年度:59.0%→2016年度62.8%)の改善がみられた。

 日本学生支援機構では、返還の義務等、奨学金制度の重要事項を十分に理解した上で奨学金の申込手続きを行うよう、2016年4月にインターネット上の申込画面を改善。2017年度からはスカラシップアドバイザー派遣事業も開始。今後も、安心して奨学金制度を利用できるよう、申込前の高校生等への制度の周知に努めていく。

参考:【日本学生支援機構】平成28年度奨学金の返還者に関する属性調査結果

大学ジャーナルオンライン編集部

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