日本学生支援機構は、奨学金の延滞者および無延滞者の属性を把握し、今後の奨学金回収方策に役立てるため、毎年「奨学金の返還者に関する属性調査」を実施している。今回、2018年度の調査結果を公表した。

 調査は2019年1月に実施した。対象は、2018年11月末において奨学金返還を3か月以上延滞している者(延滞者)と奨学金返還を延滞していない者(無延滞者)で、それぞれ無作為抽出した中から、延滞者は3,023人、無延滞者は2,388人から回答を得た。

 調査によると、奨学金の返還義務を知った時期は、無延滞者では「申込手続きを行う前」が90.1%に対し、延滞者では51.1%と約半数にとどまり、申込手続きまでの認識が十分でないことがうかがえる結果となった。また、延滞者では、貸与終了後に返還義務を知った者の合計は20.1%で、その半数以上の11.5%は「延滞督促を受けてから」知ったと回答している。

 延滞が始まった理由(きっかけ)は、「家計の収入が減った」が67.1%で最も高く、次いで「家計の支出が増えた」39.5%、「入院、事故、災害等にあったため」18.1%、「忙しかった」14.1%と続く。

 延滞が継続している理由は、「本人の低所得」が64.0%で最も高く、次いで「奨学金の延滞額の増加」39.9%だった。男女別でみると、男性は女性に比べて「本人の借入金の返済」の比率が高く、女性は男性に比べて「配偶者の経済困難」の比率が高かった。

 奨学生本人の職業は、延滞者では「正社(職)員・従業員」43.2%、「非正規社(職)員・従業員」30.9%、「無職・失業中/休職中」11.3%であるのに対し、無延滞者では「正社(職)員・従業員」72.2%、「非正規社(職)員・従業員」14.7%、「無職・失業中/休職中」4.0%で、無延滞者の方が延滞者より安定した就業状況にあるといえる。男女別でみると、延滞者の女性で「非正規社(職)員・従業員」の比率が40.7%で特に高かった。

 奨学金返還のための原資は、延滞者、無延滞者ともに「給与など働いて得る収入」が最も高く、一方、延滞者では「年金」の比率が8.4%と、無延滞者の1.0%に比べて高かった。
主な返還者が「本人の親」の場合は、「年金」を原資としている比率が38.6%で、他の返還者(奨学生本人・本人の配偶者・その他)に比べて高かった。

参考:【日本学生支援機構】平成30年度奨学金の返還者に関する属性調査結果

大学ジャーナルオンライン編集部

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