浜松医科大学の宮下晃一医師らの研究チームは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)成人患者の大規模データの解析により、デルタ株流行期では患者は若年化し、死亡率も(特に65歳以上で)大きく低下したことを明らかにした。ただし、併存症によっては死亡リスクの上昇や変動が見られるという。
2019年以降全世界に広がったCOVID-19は現在も大きな社会問題だ。ウイルス変異やワクチン普及、治療の開発、政策などにより状況は大きく変化しているが、COVID-19の理解や対策の向上のため、患者の臨床像や死亡率の変化を明らかにする大規模な調査が求められていた。
『レセプト情報・特定健診等情報データベース(NDB)』はパンデミック初期からデルタ株流行期までのCOVID-19患者約94万人のビックデータだ。このデータから研究グループは患者の診断時期を従来株流行期(2020/1/1~2021/4/18)、アルファ株流行期(2021/4/19~7/18)、デルタ株流行期(2021/7/19~8/31)に分け、患者の臨床像や死亡率、死亡リスク因子の推移を解析した。
その結果、デルタ株流行期のCOVID-19患者は、それ以前の株の流行期と比較して若年化し、死亡率が大きく低下(従来株流行期2.9%、アルファ株流行期2.2%、デルタ株流行期0.4%)。特に、65歳以上で死亡率低下が顕著だった。また、高齢や男性、悪性腫瘍、腎疾患、うっ血性心不全、慢性閉塞性肺疾患、片麻痺、転移性固形癌などの併存症がある患者は、どの流行期でも死亡リスクが高かったが、肝疾患などのいくつかの併存症に関しては、流行期によりそのリスクが変動していた。
今回の研究結果は、COVID-19の疫学理解に加え、行政の施策への活用が期待され、さらに、用いた研究手法は、オミクロン株以降の新しい流行期での大規模疫学調査にも活用できるとしている。