東京大学の加藤久典特任教授らの研究グループは株式会社ジーンクエストとの共同研究で、東アジア人特有の遺伝子多型が、多様な食行動と体格との関連を修飾することを発見した。また、遺伝子多型のタイプ別に、体格に影響しやすい食行動を示した。
ゲノム中の一塩基多型(SNP)は遺伝的体質に影響する。特に、東アジア人に特有のアルデヒド脱水素酵素(ALDH2)遺伝子上のSNPであるrs671多型は、飲酒への感受性に強く影響する。しかし、これまでrs671多型・食行動・BMI(肥満度を表す指数)の3者の関連性は不明だった。
研究グループは、日本人約1万2千人のゲノム情報とWebアンケート情報から3者間の関連性を男女別に解析した。その結果、男性で18種、女性で21種の食行動が有意にBMIと関連していた。次に、食行動とBMIとの関連にrs671多型の遺伝型との交互作用(2因子の組合せによる相乗効果)があるかを解析したところ、飲酒習慣に関わらずすべての群で交互作用を認めた。
さらに、rs671多型の遺伝型と飲酒習慣毎にBMIと関連のある食行動を観察したところ、飲酒習慣のあるGG型(酒に強い体質)とGA型(酒に弱い体質)の対象者では、男女共通して飲酒量と揚げ物摂取がBMIと正の関連を、飲酒頻度がBMIと負の関連を示した。また、飲酒習慣のない対象者では、男性でソフトドリンク摂取とBMIとの正の関連が、女性で納豆・豆腐摂取とBMIとの負の関連を認めた。また、AA型(下戸)では男女で共通して乳酸菌飲料摂取とBMIが正に関連していた。
今回、個人の遺伝的体質や飲酒習慣によって体格に影響しやすい食行動が存在する可能性を示した。これらの成果は、日本人のプレシジョン栄養※の知識基盤となることが期待されるとしている。
※各個人のそのときの状態において最適な栄養を提案し実行すること。